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第1次予選1日目

2009年11月 9日|トピックス

 第7回浜松国際ピアノコンクールの第1次予選が11月8日午後1時半に定刻どおりスタートした。今回出場者が一番多かったのは韓国の15名で、ロシア13名、日本11名と続く。多くの出場者が期待された中国からは6名と意外と少なかった。

 くじ引きで演奏順が決まったトップバッターはアーロン・リウさん(オーストラリア/16才)。少し緊張している様子がうかがえたが、バッハの平均律クラヴィーア曲集 第1巻嬰ハ長調、ハイドンのピアノ・ソナタ ホ長調 第1楽章、リストのハンガリー狂詩曲 第12番 嬰ハ短調を演奏、見事一番としての役目を果たしてくれた。

 2番目のタミ・リンさん(カナダ/13才)は今回最年少ながらも落ち着いた演奏を披露、かわいいドレス姿で、後ろに垂らした長い三つ編みが印象的だった。バラキレフのイスラメイは難曲として知られているが、見事に演奏してくれた。年令を考えると凄いと思ってしまうが、本人はいたって当然といった様子。13才ながら5年飛び級で、今年9月からハノーファー音楽演劇大学に入学と聞けばなるほどとうなずける。

 最初のブロックで3人が終わった後、午後からの部で日本人出場者のトップを切ったのは、浅川真衣さん(25才)。演奏はバッハの平均律クラヴィーア曲集 第1巻ロ長調に続いて、ハイドンのピアノ・ソナタ ホ短調、リストの「伝説」より波を渉るパオラの聖フランチェスコと彼女の選曲のセンスが光った。

 続いて演奏したのはオーストラリアのジョン・フィッシャーさん(オーストラリア/25才)、2番目に弾いたモーツァルトのピアノ・ソナタ第10番、第1楽章の澄みきった音色に心が洗われるようだった。演奏後に話を聞いて、彼の素直で誠実な人間性が演奏に現れていることを納得。タミ・リンさんと同じバラキレフのイスラメイを熱演、今度はモーツァルトと対照的な超絶技巧の曲を披露した。もっと他の曲を聴いてみたいと思わせるピアニストだ。

 初日はピアノコンクールにはあまり馴染みのない国から3名が出場したが、出場者は以下のとおり。今後さらにクラシック音楽が広がっている期待感を彼らがもたらしてくれた。
アレクシーア・ムーサさん(ギリシャ/20才)
ナタポル・タンティカーンさん(タイ/22才)
イブラヒム・ヤジさん(スーダン/24才)

 

 1次予選の面白いところは、課題曲が、バッハ、限定されたソナタの1楽章、それに加えてロマン派の作品から自由に1曲を選択となっているところ。ここにそれぞれの判断によるさまざまな作品が登場して、個性が現われる。

 初日の9人目に登場したのは、前回の浜コンのセミファイナリスト、惜しくもファイナルへの進出は果たせなかったものの、聴衆から高い人気を得た、アレッサンドロ・タヴェルナさん(イタリア/26歳)。彼が前回圧倒的な人気を得ることになった決定打は、セミファイナルでそのリズム感を存分に生かし演奏したストラヴィンスキーの『ペトリューシュカ』だったと記憶している。今回の1次予選のステージで印象深かったのは最後に演奏したショパンのスケルツォ第4番だ。独特のロマンティックな語り口が、きらきらとした音とともにタヴェルナさんなりのショパンの世界を創出していた。

 80分の休憩を挟んで開始した後半。最初に登場したのは、野木成也さん(日本/20歳)。なんと数日前から体調を崩し、この日も高熱の状態での演奏だったそうだ。
 音のしっかりとした、まろやかなバッハにはじまり、ベートーヴェンの『テンペスト』、そして、最後にはリストの『詩的で宗教的な調べ』より『葬送』を演奏。リストは力強く熱い演奏で、太い音がとても印象的だった。事前に「熱がある」と聞いていただけに、高熱をマグマのようにそのまま注ぎ込んでいるような演奏に感嘆するとともに、汗だくで演奏する姿をちょっと心配して見守ってしまった……。

 チュウ・ハオさん(中国/23歳)がロマン派の作品として選んだのは、クライスラー=ラフマニノフ『愛の喜び』と、また印象的だ。それまでのバッハ、ハイドンからまるで人が代わったように熱烈な演奏でありながら、甘さ控えめの「愛」であった。

 続いて、モスクワ音楽院で学ぶイブラヒム・ヤジさん(スーダン/24歳)。アフリカからの初めての参加者だ! 丸みのある音で、きれいなバッハ。続いてベートーヴェンの『ワルトシュタイン』の後、ラストはリストのメフィスト・ワルツ第1番。独特のリズム感、テンポの揺れとともに、力強い演奏であったが、最後にさしかかったところで時間オーバーのベルが。少々驚いたような表情で立ち上がり、戸惑いながらお辞儀をして去っていったようであった。

 1日目、最後のブロックでは、リウ・チーさん(中国/19歳)のバッハが、水の流れるような、サラサラ、キラキラとした演奏で印象的。続いて登場のイワン・ルージンさん(ロシア/27歳)は、スタスタとかなりの速足でステージに現われた後、ぐっと時間をとって集中したのち、リウさんとは対照的な太い音でバッハを弾き始める。モスクワ音楽院でドレンスキー、ナウモフ、ゼリクマン各氏に師事して身に付けるロシアピアニズムの成果がこの演奏なのか。しかし一変ハイドンのソナタはかわいらしく、音のコントロールのうまさを見せた。

 昨日の抽選会で運良くか悪くか初日を引いた17人の演奏が終了。1日目だけでも本当に多彩なピアニストが登場した。残す4日間がますます楽しみになる。

 

47 タミ・リンさん(カナダ/13才)
-13才でイスラメイとは凄いですね。
 (少し考えるような様子で)そうですか?別にそんな風には思いません。
-ご両親も何か楽器はされるのですか。
 母は何も楽器はしませんが、クラシック音楽は大好きです。父も楽器はしませんが、(姉がヴァイオリンをやっている)ヴァイオリンを修理したりするんですよ!
-5年も飛び級なんて、そんなに急いでどうします(笑)?
 (この質問には母親が)先生から、タミ、まだ結婚は早いよって言われているんです(笑)。
〔インタビューには母親も同席、とても気さくな方で、明るい家庭に育っている印象を受けました。〕

 

19 ジョン・フィッシャーさん(オーストラリア/25才)
-モーツァルトのピアノ・ソナタ第10番、第1楽章は大変音がきれいでしたね。
ありがとうございます。
-あなたの演奏を聴いていると、モーツァルトが大好きなのではないかという印象を受けました。
 (とても嬉しそうに)そうです、大好きです。
-ピアノを始めたのは何才からなんですか。
4才からです。母親がピアニストでしたので自然と教わるかたちで...。
-タミ・リンさんと同じバラキレフのイスラメイを演奏されましたが、イスラメイという曲にはどのような印象をお持ちですか。
イスラメイにはオリエンタルなファンタジーがあって、いろいろな色があるところが気に入っています。オリエンタルミュージックには興味がありますし、黒澤映画も大好きです
〔写真の笑顔でもわかるように、とてもシャイな方で、こちらの質問にハニカミながら応えてくれた。〕

 

81 アレッサンドロ・タヴェルナさん(イタリア/26歳)
タヴェルナさん ─演奏を終えて今の気持ちは?
浜コンのホールの中には、特別な空気を感じます。聴衆のみなさんの集中力がとても高い。演奏中のすべての瞬間を楽しみました。
─ピアノやホールはいかがでしたか?
 どのピアノもすばらしかったのですが、今回ヤマハの音が自分は気に入ったので、ヤマハのピアノを選びました。ホールがとても大きい空間なので、このピアノの音がちょうど合うものだったと思ったからです。
─リーズコンクールの直後でしたから、浜コンに来てくれるか心配していました!
 そうですね、僕にとって今年4回目のコンクールなので、決断がちょっと難しかったのですが、浜コンに参加できるのは(年齢のうえで)最後のチャンスなので、受けることに決めたんです。
─あなたのショパンは、いつも聴いたことのないイメージの演奏でとても印象的です。
 それは、その通りかもしれません。いつもできるだけ自由でありたいと思って弾いているので。音楽は、聴衆に語りかけなくてはいけない、それが一番重要です。なので、自分ならではの方法でそれを実現しようと思っています。ちなみに、協奏曲の中ではショパンの1番が一番のお気に入りです。
─ところで、演奏順が初日でしたね!
 うーーん(笑)。なんといったらいいか、正直もっと後の日がよかったというのが正直な気持ちですが。どうなるか、みてみましょう。
─(汗だくの状態で、ジャケットの上にコートを着こんでいるタヴェルナさんに)ところで、もう上着を着てるんですか?
 あ! ステージではちゃんとこのジャケットを……。
─いえいえ、それは知ってますけど(笑)。演奏中暑そうで、まだ今も汗だくなのに、もうそんな上着を着込んでるんですね。
 ああ、その意味ですね。今べつに寒くないんだけど、良いコンディションでステージに立てるための体調管理ということで。単純にこれから外に出るからがもう着てるっていうのもあるけど。

[写真撮らせて!のお願いに、あわてて背負っていたリュックを降ろし、快く応じてくれたタヴェルナさん。撮影後、そのリュックをすっかり忘れて出て行こうとして、アテンドのスタッフさんに呼び戻されてました! 気さくで楽しい青年です。]

 

62 野木成也さん(日本/20歳)
野木成也さん ─体調は大丈夫ですか?
あまりよくないです。先日から体調を崩して、まだ高熱があるんですよ……。
─初日を引いてしまって厳しかったですね。
全力を尽くしましたから、大丈夫です。結果は気にせず……と思っています。
─リストの熱演はとても印象的でした。この選曲はどうして?
そうですか? 実は、他のラウンドで弾いたほうがよかったかもしれないと思ってるんですよね。自分でもどうして1次予選にこれを選んだのか、よくわかりません(笑)。
─でも、むしろその高熱が全部音楽に入っているような熱演で、印象的でしたよ!
ありがとうございます、もしそう思っていただけたならいいんですけど。

 

91 イブラヒム・ヤジさん(スーダン/24歳)
イブラヒム・ヤジさん ─演奏はいかがでした?
OKだったと思います。もちろん少し緊張しましたが。たくさん練習をしたのでミスも少なく。ピアノに表れている以上に、実際には緊張していましたね(笑)。ただ、演奏を最後途中で止められてしまったのは、良くなかった。僕はかまわないけど、音楽のことを考えると、途中でストップするというのは……。
─日本は初めてですか?
はい! 日本人は他の人にも自分自身にも礼儀正しい。こんな国は見たことがありません、すばらしいですね。街はどこもきれいで、僕にとってはちょっとしたショックでした(笑)。今回、両親も一緒に来ていて、とても喜んでいます。ぜひ、日本に来るのがこれが最後にならなかったらいいなと思います。
─浜コンに参加することにしたきっかけは?
今年モスクワ音楽院を修了したので、何か次にすることを探していたんです。ですからこのコンクールを受けることは、僕にとっては留まることなく動き続けるための後押しだったんですね。もちろん日本に来てみたかったということも大きいですが。
─これまで、コンクールは?
小さいころイタリアのコンクールで4位になりました。でも僕は「コンクールピアニスト」ではないので、こんな大きなレベルの高いコンクールは初めての経験です。普段はコンサート活動ばかりですから。でも今日は良かったです。あとは結果を待ちます。それまで、練習します!
終演後駆けつけたお母さまと

 

56 ミハイル・モロゾフさん(ロシア/22歳)
ミハイル・モロゾフさん -汗を拭き拭きの熱演でしたね。一つ一つの音がていねいで、音を大切に音楽に向き合っている姿勢が感じられる演奏でした。
ありがとうございました。
-演奏前の休憩時間にどなたか日本人の方が「ミーシャ、がんばれ!」と声援を送っていましたが...。
日本に来たのは今回3回目ですからね。浜松のアカデミーにも来ています。

 

69 イワン・ルージンさん(ロシア/27歳)
イワン・ルージンさん ─今日の演奏はどうでした?
ただ、自分自身に集中するようにしました。このコンクールの組織はとてもすばらしく、すべてのことが完璧です。聴衆、スタッフのみなさんのおかげですね。
─バッハの最初の音がとても印象的でした。ロシア的というか。
そうですか。ロシアの光景が浮かびました?
─でも、あなたのこの後の曲目にはロシアものはほとんどありませんね。
はい、2次予選で1曲ラフマニノフが入っていますけど。僕は、重要なことはロシアものだけでなくいろいろな種類の作品を演奏できることだと思っています。もしかすると、ロシア音楽を演奏しているとき、私たちロシア人はその魂や気質から他の方々よりもよく演奏できるという面もあると思います。でも、僕の場合はバッハ、ブラームスやシューマンが好きで、一部のロシア人作曲家よりも自分に近いと感じることがあるのです。
─緊張してましたか?
はい、実は。思っていた以上に緊張してしまいましたね。
─ずいぶん速歩きでステージに登場しましたもんね。
あっ、それはいつもです。いつも速いです。でもとにかくいつもより緊張していましたね。時差ぼけのせいで昨夜あまりよく眠れなかったからか……理由はわかりませんけど。

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