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第1次予選最終日

2009年11月13日|トピックス

 今日で第1次予選の演奏が全て終了、最初の演奏者キム・ソンファさん(韓国/17才)のバッハ、平均律クラヴィーア曲集 第2巻ロ短調を聴いていて、第1次予選の終了は、すなわち毎日聴き続けた平均律クラヴィーア曲集とのしばしの別れを意味するということに気づき、感傷的な気分になった。出場者の奏でるバッハにどれだけ癒されたかしれない。

 2番目に登場した、ショーン・ケナードさん(アメリカ/25才)のクライスラー/ラフマニノフの愛の喜びは、活き活きとして聞いているこちら側までもすがすがしい気持ちにしてくれた。ケナードさんと第2ブロック(11:20~12:20)の2番目に弾いたスタニスラフ・ヘガイさん(カザフスタン/24才)は、2次予選では委嘱作品は「ピアノのための無常の鐘」を弾く予定だ。

 クワン・イさん(アメリカ/24才)のスケルツォの3番は、のびのびとした演奏だった。
サラ・ダネッシュプールさん(アメリカ/22才)は、シューマンのアベッグ変奏曲に自分の音楽観を反映させた。

 第3ブロック(13:30から4:30)の最後に弾いた尾崎有飛さん(日本/20才)は、バッハはもちろんのこと、今大会で多く聴かれたハイドンのピアノ・ソナタ 第62番変ホ長調 第1楽章を演奏したが、その後に弾いたリストのリゴレット(演奏会用パラフレーズ)と共に、おそらく本人も納得の出来だったと思われる。

 

33 ショーン・ケナードさん(アメリカ/25才)
-ピアノを始めたきっかけは何だったんですか?
 父親が小さい時ピアノを習っていたので、僕にも楽譜の読み方を教えてくれたんです。それで、一人で弾けるようになって、ちゃんと先生についたのは10才の時です。
-2次予選では、権代氏のピアノのための無常の鐘を弾くことになっていますね。
 ピアノのための無常の鐘は、複雑でフォームを出すのが難しいです。覚えるのも大変でした。
-黒い鍵盤のグリッサンドは、手袋を使って練習したのですか?
 僕は使いませんでした、大丈夫でしたよ。
-浜コンの印象をお聞かせ下さい。
 きちんとしてますね。高崎に祖父母がいるので、日本に来るのが楽しいです。

 

34 スタニスラフ・ヘガイさん(カザフスタン/24才)
-カザフスタンの音楽事情はどのようですか?
 多くの音楽学校があります。才能のある子供たちのための特別な学校もあります。
-今は韓国国立芸術大学ですから、韓国にお住まいですよね?
 はい、とてもいいところで、食べ物もおいしいです。
-2次予選では、権代氏のピアノのための無常の鐘を弾くことになっていますね。
 この曲が好きだからです。構造やアイデアに興味があります。

 

93 クワン・イさん(アメリカ/24才)
-今日の演奏はいかがでした?
 自分なりにベストを尽くしました。
-コンクールに出るきっかけは?
 友達に勧められたからです。
-アメリカ国籍ですが、生まれもアメリカなんですか?
 いいえ、12才で家族みんなでアメリカへ移住しました。
―学校はジュリアードですね。
 私の先生は、五嶋みどりさんの伴奏や室内楽で一緒に演奏することでも有名なんですよ。

 

14 サラ・ダネッシュプールさん(アメリカ/22才)
-カーティス音楽院はもう卒業されているのですか?
 はい、今はワシントンに戻っています。
-ピアノを始めたきっかけは?
 5歳上の兄が最初習っていたんですが、母親が私のほうが向いていそうだということで5才から、私が習うようになりました(笑)。
-シューマンを選曲されていますね。
 シューマンは演奏が楽しめます。みんなテクニックを見せようと早く弾きますが、私は自分の音楽性を見せたいと思って、この曲にしました。

 

64 尾崎有飛(日本/20才)
-1次の選曲はどのように?
 自分の弾きたいもので、今まで弾いてこなかったものを選びました。申し込みの時点で何を弾くかを決めて、そこから作り上げてきました。リサイタルをする時とかもそうですが、プログラムの総入れ替えをするんです。その前から弾いている曲だと、新鮮味がありません。いつも曲を決めてからリサイタルに臨んでいます。
-弾く時の姿勢がとてもきれいでした。無駄な動きがないですね。
 実は以前は鍵盤を見て弾くだけで、微動だにしなかったんです。それで、鍵盤の匂いを嗅いでいるんじゃないかと言われましたよ(笑)。全く動かないのもどうかと指摘されたので、指揮者の動きを研究して、それを反映できる動きはないかと工夫しました。
―現在はハノーファー音楽演劇大学に行ってらっしゃいますね。そういうきっかけなんですか?
 浜松アカデミーでヴァルディ先生に会って、その後先生のところへ行きたいとお願いして、「じゃあ、来なさいと...」。
〔姿勢の話をしていた時、「僕は腕が長くて、座って動かなくても端まで届いちゃうんですよ」と言って、両手を広げて見せてくれた。確かに。〕


 ギンタラス・ヤヌセーヴィチュスさん(リトアニア/24歳)は、さらさらとしたバッハ、心地のよい穏やかなベートーヴェンのソナタ第21番と、ダイナミックで丸い音のリストの半音階的大ギャロップを続けて演奏。統制のとれた、気持ちの良い音のバランスで、長く聴いていたいと思わせられた。最後は弾ききった勢いで、思わずガッツポーズ!

 アンジェロ・アルチリオーネさん(イタリア/27歳)は、真面目で整った正統派のバッハ。ロマン派の作品にはスケルツォ第3番を演奏した。

 プログラムの大人っぽいアーティスト写真が印象的なタミーラ・サリムジャーノワさん(ウズベキスタン/17歳)は、まず最初にコロコロとした軽やかなバッハを演奏。リストのスペイン狂詩曲は、美しくまとまった演奏で、まるで詩のような情緒のある音楽を聴かせた。

 続いて、2007年のロン・ティボーコンクール2位ということで注目されているキム・ジュンヒさん(韓国/19歳)。静かな弾き姿とともに、きれいな音と抑揚がとても心地よいバッハ。ショパンの舟歌は、優しい表情で、想いもこもった演奏だった。2年前のパリのコンクールで聴いたステージから、また成長している姿を見せてくれた。

 そして、水谷桃子さん(日本/18歳)は、情感たっぷりのバッハ。そしてハイドンのピアノソナタ変イ長調はリズミカルで軽快。最後に演奏したリストの『ラ・カンパネラ』は、技術的にまったく無理を感じさせない、流れるような美しい音楽。

 休憩を挟んで、5日間の長い1次予選も最後のブロックとなった。エマール・ガザノフさん(ロシア/26歳)は、ゆるやかなバッハから始める。続いてベートーヴェンのソナタ『告別』は、まるでグレーの世界が広がるような音に始まり、表情豊かな世界へと展開していく。最後は、クライスラー=ラフマニノフの『愛の喜び』。ロシア的な幹の太いしっかりとした音と、細くきらきらした音のメリハリの付け方が抜群。その貫禄ある風貌とあいまって、なんだか頼りがいのある音という感じ。次もぜひ聴いてみたいと思わせる演奏だった。

 続くセルゲイ・ソボレフさん(ロシア/27歳)は、前回のチャイコフスキーコンクールで第4位(2000年第2位のイム・ドンヒョクと同位を分けた)となった期待の存在。しかし彼の演奏の際に、事件は起こった。最初から、なにやら少し頭をフラフラとさせながら登場し、演奏を始めたものの、バッハはどうも音も細く、元気がない。前奏曲を弾き終え、次に入ってすぐに鍵盤を打ち鳴らして立ち上がり、ステージを去ってしまった。何らかの理由で、気持ちが限界に達してしまったとか……。場内では、個人的な都合により演奏をキャンセルしたとの説明がなされた。これまでにも体調不良などで、曲間で棄権をするコンテスタントというのは見たことがあるが、ピアノを打ち鳴らして、開始から5分も経たないうちにというのは初めて見る光景だった。

 会場のざわつきもおさまり、次の奏者の時間になったところでキム・ヒョンジョンさん(韓国/18歳)が、まるでステージの重い空気を払拭するような、鮮やかな赤のドレスで登場。赤い花の髪飾りをつけて、さながらフラメンコダンサーのようだ。バッハからモーツァルトへ、音色を変えて豊かな表情とともに聴かせる。最後はサン=サーンスの『死の舞踏』。歯切れの良いタッチとペダリング、技術的にも申し分がない上、のびのびとした表現力、安定感、そして自身の演奏がしっかりと見えているのだろうと感じさせる落ち着き。聴くものをまったく飽きさせない演奏だった。


31 ギンタラス・ヤヌセーヴィチュスさん(リトアニア/24歳)
ギンタラス・ヤヌセーヴィチュスさん ─演奏終えて今の気分は?
何か食べたいです(笑)! いつも、本番のある日はなにも食べないし、なにもしゃべらないようにしてるんですよ。だから夜11時にコンサートがあるときは、それまでずーーっと誰とも話さないし、何も食べない。ただ、今住んでいるドイツのハノーファーはすばらしい街で、町の人々が音楽が大好きなもので、音楽家とみると街中で話しかけられたりするのでいつもそううまくはいきませんけどね。でもそれは時に励ましになるので、良い結果になることもあります。
─クライネフ先生に師事されているんですよね。ところで、演奏の後、ガッツポーズが出ましたね!
はい……クライネフ先生は多分この時間はお休みになられていて見てないと思うんですが……後で怒られるんじゃないかと……。
─でも、とっても嬉しそうに見えましたよ。
それはもちろんですよ! この長い5日間、20分の自分の演奏時間を待ちに待って、ようやくそれが終わった。それで嬉しくない人がいると思いますか! 次に進むことになれば、また自分の感情を統制して過ごす3日間が始まります。つまり、今が僕の11月の中でもっとも幸せな瞬間ということです。僕は、ステージ上での自分自身を信用しきれる音楽家ではないので、練習に練習を重ねて、最高のコンディションのためにベストを尽くす。自分を完全にコントロールできるようにしてステージにあがりたいんです。普段はとてもシャイなので、客席にたくさん人が集まっているのを見た瞬間、これで悪い演奏をするわけにはいかないって、自分のことをコントロールしようとする。でもそうすればするほど、自分がどこにいるかすら、わからなくなってしまうこともある。それで結局、演奏が完璧でなくなってしまって、これまでコンクールではうまくいったためしがなくて。でも今日は、聴いてくださったみなさんが僕の演奏を好んでくれていたらいいなと本当に思います。
─音がきれいで印象的でした。
はい、今日弾いたヤマハのピアノは本当にすばらしくて、最高の仕事をしてくださったと思います。ヤマハのピアノで一生演奏活動をしたいと思ったくらいですよ。
─日本滞在はいかがですか?
このコンクールは世界で一番すばらしい環境が整っています。最高のコンディションを作っていただいていることに、感謝したいですね。そして日本は本当にすばらしい。人々が子どものころから礼儀正しくあることを自然に身に付けながら育つ、世界で唯一の国だと思います。他の国では、礼儀正しいということは仮面でしかない。日本ではそれがとても自然におこなわれている。すばらしいことだと思います。この国により長くいられるように全力を尽くしたいと思います。

[写真を撮らせて、というと、ヒゲをそっていないしちょっと……としぶる。聞くと、本番前は指先が荒れるからひげをそらないことにしている(なんとシャワーも控えている!)のだとか。豪快な外見に似合わず、とーっても繊細なギンタラスさんだ。]


53 水谷桃子さん(日本/18歳)
─演奏を終えてご感想は?
前回出場したときに1次は通ったから……と思ってすごく緊張したんですけど、最終的にはすごく楽しんで弾けました。
─3年ぶりに浜コンのステージに戻った感想は?
ここで弾いたときはいい思い出しかないので、大好きな場所です。
─この3年でご自身の中で変わったところは?
精神的に大きく成長したと思います。たぶん今日くらい緊張していたら、3年前だったらぐちゃぐちゃになってたと思います(笑)。

水谷桃子さん

36 キム・ヒョンジョン(韓国/18歳)
キム・ヒョンジョンさん ─ドレスと髪飾りはご自分で選んだものですか?
はい、そうです!
─演奏されて、今のご感想は?
とても緊張しましたよ。自分の番を5日間も待ちましたし、ようやく終わってすっごく嬉しいです! 浜松コンクールは世界でもとても有名なものなので、参加してみたいと思ってきめました。
─前のコンテスタントが途中で演奏をやめてしまったトラブルは、気にかかりませんでした?
いえ?
[アテンドのスタッフさんによれば、こんな混乱の中でも、本番の2分前、もう出番だと言ったときにおもむろにバナナを食べだしたようで、その落ち着きにみんな驚いたとか!]

 

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