
2006年11月15日 | 第6回コンクール トピックス
平日の午前中にもかかわらず、客席は1/2弱埋まっている。だんだんと盛り上がりを見せる第1次予選も、今日で4日目だ。
今日の一番手、セルゲイ・クズネツォフさん(ロシア)は、今回のコンクール最年長の28歳。バッハ平均律クラヴィーア第2巻変ホ長調、ハイドンのソナタ第34番、シューマン「夜に」を演奏。落ち着いた音とテクニックで、確実なうまさを見せた。とくにハイドンのソナタでは、哀愁ある音色の表現が際立つ。
3番目に登場したマルコ・ムストネンさん(フィンランド)は、ベートーヴェンソナタ第26番「告別」第1楽章、バッハ平均律クラヴィーア第1巻嬰ハ長調、ショパンスケルツオ第4番を演奏。丁寧なタッチではじまったベートーヴェンは、やわらかい抑揚と繊細な音を駆使した、しなやかな演奏。それとは一転、続くバッハはきらめきのある、しっかりとした音で弾き分けられる。最後には、また異なったテイストであるショパンのスケルツオが配置されるという、「聴かせる」プログラミング。澄んだやわらかい音を印象付ける、パワフルでありながら控えめな演奏であった。演奏終了後のバックステージでは、ほっとしたのか、終始にこやかな笑顔でコメントをくれた。
ジャン・ミュレルさん(ルクセンブルク)は、ロビーにいると、遠目にも目立つほどの長身の持ち主。バッハ平均律クラヴィーア第2巻ロ短調は、一音一音しっかりとしていて、高音もきれいに響く。薄曇りの日のドイツの街並みが目に浮かぶ、ヨーロッパの香り高い表現。続くベートーヴェンのソナタ「熱情」第1楽章は、平たいプレートのようなパートと、急勾配の坂道のような対極的なパートがそれぞれ見事に表現し分けられている。最後まで丁寧な演奏。最後は、ショパンの「英雄ポロネーズ」。過度に華美でなく、適度な力強さを備えた個性的な表現が印象的。
午後には3人の注目の日本人コンテスタントが登場する。そのせいもあってか、会場はたくさんのお客さんで埋まっていた。昨日に引き続き、前回最高位のアレクサンダー・コブリンさんも客席に現われた。
午後の2番目には、浜松出身で注目を集める川村友乃さんが、きりりとまとめた髪に黒いドレスで、颯爽とステージに現われた。バッハ平均律クラヴィーア第2巻ロ短調、モーツァルトのソナタ第14番第1楽章、ショパンのバラード第3番を演奏。技術と表現力の高さが現われた、安心感を与える演奏を聴かせた。
注目の日本人コンテスタントの2人目、後藤正孝さんは、バッハ平均律クラヴィーア第2巻ト短調、ベートーヴェンソナタ第6番、ワーグナー=リスト「イゾルデの愛の死」を演奏。ベートーヴェンは、どっしりとした土台のうえに、浮き足立つことなく音を乗せてゆく、確実な演奏。続く「イゾルデの愛の死」は、ドラマティックな抑揚が随所に見られ、情熱が存分に注がれていることが客席で感じ取れる。最後までスタミナが切れることなくエネルギッシュに弾ききった。彼の演奏のよいところが存分に発揮される選曲だったようだ。
そして、最年少ということでも注目を集める、本日3人目の日本人コンテスタント、15歳の水谷桃子さんは、最後から2番目に登場。ショッキングピンクのドレスに身を包み、軽やかな足取りでステージに進む。バッハ平均律クラヴィーア第1巻ホ長調、ハイドンのソナタ第24番、リスト「リゴレット」を演奏。ハイドンはよく指がまわり、さらに体全体を使って表わす表現力は、15歳のものとは思えない。間のとりかたも絶妙で、一音一音クリアに響く音が魅力。リストのリゴレットでも、期待に違わず高音がクリアに響き、それに対して、低音の旋律は温かみのある音を響かせる。リズム感、パワーともに充分の演奏。
続いて、本日の最後を締めくくったのは、17歳のディナーラ・ナジャーフォヴァさん(ウクライナ)。シルバーのドレスをキラキラと輝かせて登場。ベートーヴェンのソナタ第3番の冒頭を、これでもかというほど繊細な音で奏でる。直前のコンテスタントと同じ楽器とは思えないような、まったく性格の異なる音が鳴っていることに驚かせられる。一方、続くバッハ平均律クラヴィーア第1巻ハ長調は、元気いっぱいのタッチで、高音がきれいに響く。最後のリスト「ハンガリー狂詩曲」第2番では、飽きさせない個性ある音の運びを聴かせた。客席からの反応を受けて、バックステージでは興奮した面持ちで嬉しそうにコメントを語ってくれた。
マルコ・ムストネンさん(フィンランド)
「会場ではどう聴こえた? 最近大きなホールで演奏することがなかなかなかったから、ちょっと気になって。演奏には、満足してます。1次予選というのはいつも精神的にきついですから、もちろん緊張しましたが、ここを乗り切ったのでこの後のステージはきっと大丈夫。とにかく、緊張しているように見えないよう、がんばりました(笑)。今、このまま練習室に行って練習です!」
ジャン・ミュレルさん(ルクセンブルク)
「演奏が終わってどうかって? それは、もちろんマシな気分になりました(笑)。緊張したかって? それは、しなかったって答える人なんていないと思いますよ! でもその中でなんとかしなくてはいけない。そして、たった20分間の中で表現しなくてはいけない。そういう意味では、満足な演奏ができたと言えるでしょう。コンクールは、難しいものです。日本には、何度か来ています。実は、6年前の浜松コンクールに参加しました。このコンクールは好きなので、また挑戦してみました。コンクール自体は好きではないけど、成功すればたくさんの演奏機会が得られるという意味では、好きですね。」
ジュン・アサイさん(アメリカ)
「ピアノもとても弾き心地がよかったし、きれいな音でしたし、お客さんもよかったし、すべてがうまくいったと思います。あんまり緊張もしませんでした。3曲目のシューベルト=リスト「水に寄せて歌う,魔王」は、私自身、歌曲がとても好きなのと、20分以内におさまるということで(笑)選びました。」
後藤正孝さん(日本)
「いや~、疲れました(笑)。緊張しました。ものすごく。やっと終わったという感じです。演奏については、こまごま、いろいろやってしまいましたが、楽しく弾けたのでよかったと思います。3曲目(「イゾルデの愛の死」)は、ずっと弾きたかった曲で、絶対に今回の浜松で弾こうと思っていたので、それに合わせて、曲の性格が同じにならないよう他を選曲しました松で弾こうと思っていたので、それに合わせて、曲の性格が同じにならないよう他を選曲しました」
水谷桃子さん(日本)
「よく弾けたと思っていますが、70点くらいのレベル。すごく緊張していたので、ミスとかも出てしまいました。(今回最年少での参加について)年上のコンテスタントのみなさんと一緒に弾いて、勉強させていただくつもりで浜松に参加しました。客席にはあたたかい聴衆の方たちがいて、嬉しくなりました。(ピンクのドレスについて)ピンクが大好きなんです!」
ディナーラ・ナジャーフォヴァさん(ウクライナ)
「とってもすばらしい気分!ステージで、まったく緊張しなかったの! ステージに出る前は少し緊張していたけど、出て行ったとたん、ホールはすばらしい静けさで、お客さんはみんな私の演奏を聴こうとしてくれているし、それを見てぜんぜん緊張していない自分に気が付いたの(笑)!!日本には、2004年にも来てます。若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクールで2位になったことがあるの!演奏には・・・一応満足!」
[協力:ショパン]