NewsNEWS

2018.12.12 Official Report

【公式】 第5位 務川慧悟さん インタビュー

「孤独の中、自分と作曲家の一対一の関係を深く築くということを試したかった」



ーコンクールを終えて、今どのようなお気持ちですか?

 コンクールの後のレセプションで、多くの方から演奏やプログラミングを気に入ったと声をかけていただきました。こうして応援してくれる方が増えたことが、とても嬉しいです。

1212003.jpg

ー3次予選の演奏後のインタビューで、作曲家ごとに音や技術を変えるというお話が出ました。そういった技術を深めていったのは、フランス留学後ですか?

 そうですね。今フランスで師事しているのは、フランク・ブラレイ先生と、上田晴子先生です。お二人は、そのあたりのことをしっかり指導してくださいます。

 僕にはフランスに留学してから心がけていることがあって、それは、フランスの影響を受けない部分を自分の中に持っておくこと、日本人であるという意識を保ち続けるということです。フランスの尊敬している部分は取り入れながら、でも何でもかんでも吸収するというより、核になる日本人としてのアイデンティティや、例えばロシア音楽を演奏するにあたって学んだ別のアプローチなどは、しっかり持ち続けたいと思っています。

 

ーピアノの道に進むことを決めたのはいつごろですか?

 職業にすることを決めたのは、中学3年生くらいですね。学生音楽コンクールで1位をいただき、また進路も決めなくてはならない時期だったので、なんとなく、ピアニストになるんだろうなと思いました。でも思い返すと、小学生くらいのときからピアニスト以外の道を考えたことはなかったように思います。



ーでは、ピアノを弾いていて一番幸せだと感じるときは?

 僕は舞台の上が好きなので、幸せだと思う瞬間はコンサートの最中が多いですね。あと幸せを感じるということとは少し違いますが、僕にとっては、ピアノが心の支えになる瞬間がすごく多いです。、普段、結構ナーバスというか、超マイナス思考で心が弱いので(笑)。



ーそうなんですか。ピアノを弾いているときは、そんな自分とおさらばできると。

 おさらば・・・そうですね。現実を忘れることもできますし。例えば弱っているときに、ラヴェルのこの曲があってくれてよかった・・・と思うことがあります。そういう作品は、ブラームス、ショパンなどいろいろあります。幸せを感じるというプラスの方向もあるのですが、どちらかというと、支えられたり、助けられたりすることが多いですね。

1212001.jpg

ーこれまで何度かお話を伺う中で思ったのですが、務川さん、結構思い出を大切にするタイプですか?

 ああ、そうですねぇ。昔の思い出ばかり振り返っている人間です(笑)。、そういう意味でショパンってすごく共感できるんです、コンクールでは一度も弾きませんでしたが。彼も、昔のことばかり思い返していますよね。



ー今回はカワイのピアノを選んでいましたが、その理由は?

 カワイのピアノには僕の中で抽象的な色のイメージがあって、「輝くオレンジ」って決まっているんです。例えばピアノの能力をグラフにしたとき、カワイのピアノは個性があるので、どちらかにグラフの形が偏ると思います。その個性をうまく引き出すことができれば、すごくいい楽器だと思いました。それができるかどうかは、僕次第ですからね。



ー簡単に鳴るピアノより、そういう楽器のほうがよかったのですね。

 無神経に弾いたらうまくいかないかもしれませんが、こだわりを持って弾いてあげればすごくいい音のするピアノだと思って、この楽器の魅力を引き出してあげたいなと。

1212002.jpg

ー今回浜松コンクールを経験して、ご自分について新しい発見はありましたか?

 ありました。実は僕、このコンクールを受けるにあたって、ファイナル進出が決まるまで、孤独でいようと決めていたんです。人がなんと言おうとそうしようと最初から思っていました。なるべく人目を避けて練習室に行き、ホテルの部屋に戻って一人で楽譜を眺め、散歩に行き、練習室に行って・・・という繰り返しでした。もちろん、ステージが進んでいくと、だんだん人に会わないことが難しくなっていきましたが。

 今回、コンクール中に孤独でいようと決めていたことには、目的があります。人に演奏で何かを伝えるには、表現について、自分の中で確信を持っていなくてはいけません。その確信は、先生や誰かがこう言ったからというのではなく、自分自身がこう思うということに基づいて持ちたかった。そこで、人の言葉をできるだけ避け、また先生のことはもちろん尊敬しているけれど言われたことを一旦忘れて、自分と作曲家の一対一の関係を深く築くということを、試しにじっくりやってみたいと思ったのです。

 実際に試してみて、この2、3週間で得られたことはとても大きかったです。その確信を持った表現が正しかったかどうかはわかりませんけれど。でも、この4回のステージを通して、今まで以上に、音楽について自分はこう思うと言えるようになったと感じています。これは、我ながら良い収穫でした。



ー孤独を辛いと思ったことはありませんでしたか?

 もともと人といるのが好きなほうですし、それによって良いこともたくさんありますが、でも僕は音楽も好きですから、音楽だけと向き合う時間もいいものでした。



ー自分には孤独が必要なのだといって北欧の島に家を買ったと言っていたリフシッツのことをふと思い出しました・・・

 それはすごいな。そこまではできなかったですけど。それじゃあ将来、島に家買おうかな・・・


1212005.jpg

ーでは最後に、ピアニストとして活動していくうえで、今後大切にしていきたいことはなんでしょうか。

 むずかしいですが・・・。は結局、コンサートの時間が一番好きなので、人前で弾くことはできる限り続けたいのですが、そこで心がけたいのは、人に何かを伝えるぞと思うというより、作品のことをまっすぐ見ていたらそれが自然と伝わるようなスタンスでいたいということです。

 例えば新幹線が大好きな子供は、新幹線を見て「来た来た!」って喜んで話すと思いますが、それって大人に新幹線の良さを伝えようと意識してやっていることではありませんよね。でも大人はそれによって、この子はとても新幹線が好きなのだとわかる。そういうようなことが、舞台でしたいのです。

 何かを見せようとするのではなく、僕はこの作品がとにかく好きなのだということが、自然と伝わればいいなと。作品と自分の1対1の関係を深くしていく中で、それを聴いて自然とついてきてくださる方がいればいいなと思っています。

 



(文・高坂はる香)

  • HOME
  • ニュース
  • 【公式】 第5位 務川慧悟さん インタビュー

Hamamatsu International Piano Competition

pagetop

主催

  • 浜松市
  • 浜松市文化振興財団

特別協賛

  • ANA
  • 大和証券
  • 遠鉄グループ
  • JR東海
  • KAWAI
  • Roland Foudation
  • 三立製菓株式会社
  • YAMAHA

後援団体

外務省、文化庁、静岡県、公益社団法人日本演奏連盟、一般社団法人日本音楽著作権協会、一般財団法人地域創造、 一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)、浜松商工会議所、公益財団法人日本ピアノ教育連盟、 時事通信社、産経新聞社、日本経済新聞社、毎日新聞社、読売新聞社、朝日新聞静岡総局、静岡新聞社・静岡放送、 中日新聞東海本社、NHK静岡放送局、静岡朝日テレビ、静岡第一テレビ、テレビ静岡、株式会社音楽之友社、 月刊ショパン、K-mix、FM Haro!、浜松ケーブルテレビ株式会社、株式会社河合楽器製作所、株式会社ピアノギャラリー、 ローランド株式会社、ヤマハ株式会社

〒430-7790 静岡県浜松市中区板屋町111-1 公益財団法人浜松市文化振興財団内
TEL:053-451-1148 / FAX:053-451-1123
MAIL : info@hipic.jp URL : http://www.hipic.jp

Copyright © Hamamatsu International Piano Competition. All rights reserved.
  • Alink-Argerich FoundationAlink-Argerich Foundation
  • Alink-Argerich FoundationAlink-Argerich Foundation
  • World Federation of International Music CompetitionsWorld Federation of International Music Competitions
Copyright © Hamamatsu International Piano Competition.
All rights reserved.
Powerd By Ultraworks

pagetop