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2018.11.28 Official Report

【公式】本選指揮者 高関健さん インタビュー

「共演の経験を次に役立てられる音楽家は、伸びるし長く活躍できると思います」
 ※リハーサル終了後、本選の本番前に行ったインタビューです。 

ーファイナリスト6名とリハーサルをされて、印象はいかがですか?

 おもしろいと思ったのはトルコのチャクムルさんです。圧倒的に、音楽家だと思いました。みんな大きな曲を持ってくる中、一人だけ20分で終わってしまうリストを弾くわけですが、その中で彼がやっていることはすごく多い。やりたいことがはっきりしています。だからおもしろいんですね。オーケストラも同じ意見だと思います。
 前回の優勝者のガジェヴさんに少し似ていますが、もしかするとより強力かもしれません。アイデア、テンペラメントがありますし、楽譜をよく勉強していて、感心しました。

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ーはたから見ていると、短い曲で不利じゃないのかななどと思っていますが、実際にはそこに濃密な音楽があるから問題ないわけですね。

 ええ、チャクムルさんにとってはそういうことは関係ないのでしょう。なるべくたくさん弾いていたいとかいうこともなく。こういう作品のほうが向いているのでしょうね。私は、彼が予選で何を弾いたかは知りませんが。
 あと、韓国のイ・ヒョクさんは、天才少年という印象です。テクニックは抜群ですし、ラフマニノフの3番という難しい曲でも、何回やってもちゃんと弾けていて、全く怖いところがなさそうです。

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ー日本勢の印象はいかがでしたか?

 それぞれにいいところがあると思いました。例えば牛田さんは、今日のリハーサルでの演奏が、おとといの最初のリハーサルとくらべてずっと良くなっています。大変なプレッシャーがかかっている中で予選からここまで進んできたことで、彼は成長したのではないでしょうか。


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ーコンチェルトはファイナリストによって演奏経験に差があると思います。オーケストラとの共演に慣れているかどうかは、どのくらい違いとなってあらわれるでしょうか。

 それは大きいですよ。やはり、ピアノとオーケストラは音が出るタイミングが違うので、そこに慣れていないと合わせるのが難しいですから。
 ピアノは、鍵盤を押した瞬間に音が出ますが、オーケストラは指揮者が手を下ろしても、その瞬間に音は出ていません。もっと後で音が出ます。例えばラフマニノフなら、カデンツァが終わってドンっとオーケストラが入ってくるところなど、ピアニストはタイミングを合わせるのが大変です。指揮者は簡単にドンと手を下ろしてそれでいいと思っていますが(笑)、ピアニストはそれに合わせて一緒に弾いてしまったら、自分だけ早く出てしまいます。それを経験上知っているかどうかは、大きな違いです。今回のみなさんは、大丈夫なようにも思いますが。



ーオーケストラと合わせる感覚は、経験で培うしかないのですね。

 それはありますね。たとえば、音楽を一生懸命自分で組み立ててきていて、オーケストラが入ってくるときに自分だけ完結してしまっていると、音楽のつながりが悪くなります。ソリストが音楽をうまく渡してくれないというか...そのやりとりは、経験がないとわからないかもしれません。
 ピアノはとくに、普段、自分一人で音楽を完結させられる楽器です。これはいわばピアニストの特権でもありますね。器楽も声楽も、ほとんどの場合は共演者がいて音楽が成立しますから。ピアニストは一人で音楽がつくれるものだから、それをオーケストラと共演するときにそのまま持ってきてしまうと、つながらなくなるんです。
 コンチェルトのときには、もうちょっと大雑把というか、自由がきくけれど自分のやりたいことはやってしまう、という姿勢できてくれるほうが、その場で一緒に音楽を作ることができます。



ーバランスが難しそうですね。こうやるんだと決めすぎていてはだめだけれど、やりたいことや、個性ははっきりしているという。

 そうですね。例えば以前、アルゲリッチと共演する機会がありましたが、私にとってこれはとても光栄な経験でした。彼女の演奏というのは、次に何がくるのかわからない、だけど一緒にやっていて、不思議と怖くないのです。経験を積んだ大ソリストには、そういうところがあります。


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ー今回は、偶然6曲全て異なるコンチェルトが揃いました。今回審査委員の先生方からは、レパートリーの選び方の重要性についてよく話が出たのですが、コンチェルトについても、ピアニストによって合う、合わないがあると思いますか?

 それはあると思います。例えばチャクムルさんがリストを選んだことは、結果的に良かったかもしれませんが、彼がバルトークやプロコフィエフ、ベートーヴェンなんかを弾いていたら、もっと強力なものが出ておもしろかったかもしれないと思うこともあります。また、がんばって選んで大変そうに見受けられるケースも、なくはないなと。



ーコンクールですから、自信を持って出せるレパートリーか否かも重要でしょうね。

 みなさん若いから、これをチャンスに弾いてしまおうというところもあるかもしれませんし、それも良いと思いますが、審査の結果がどうなるかはわかりませんね。
 思い入れが強い作品のことは、よく勉強もしているでしょう。ただそれを実際にステージで演奏したとき、お客さんにちゃんと伝わるのか、思ったことができるのかは別問題です。それは我々指揮者も同じです。初めてやる曲はもちろん難しいし、何度やってもうまくいかない曲もあります。



ーピアニストのキャリアを考えたとき、ソロの活動も大切ですが、やはりオーケストラからソリストとして呼んでもらえることも、長く幅広く活動する上では一つのポイントとなるのではないかと思います。そのために磨くべき能力や、こういう人ならチャンスが多くなるのではというアドバイスはありますか?

 やはり、性格的に外向きな人の方が得なのではないかとは思いますね。
 以前ある演奏会で、こんにちはという挨拶も交わしてくれないピアニストがソリストでいらしたことがあって...リハーサルでは、始まる寸前にふらっとあらわれて、通して弾いて、すぐいなくなってしまう。結局、ひとこと話したかな?というくらいで、全くコミュニケーションがないまま本番が終わりました。そうなると、一緒に音楽をやったという感じがしないんですよね。オーケストラ側も全くインパクトを与えられないまま終わってしまう。うまく弾けるかもしれないけれど、またいらっしゃい、という気持ちにはなりにくいですよね。
 少し大づかみで、ちょっとはみ出しているくらいのピアニストでも、自分のやりたいことはこうなんですと言ってくれて、場合によっては、こちらからそこは違うんじゃないの?なんて言えるようなタイプのソリストのほうが、一緒に音楽を作ったという感覚をみんなに残します。
 それに、ピアニスト本人にとっても、その共演の経験が次に役立つでしょう。指揮者もオーケストラ奏者もそうですが、音楽家って、それこそが成長するきっかけです。オーケストラ奏者も、共演者に横からそこは違うと言われたりして、みんなうまくなっていくのです。
 そういうことを楽しめる人は、コンチェルトが弾けるようになるのではないでしょうか。



ーいくら音楽でコミュニケーションをとるといっても、やはり人としてのコミュニケーション能力も必要という...。

 そうなんですよ。そうでないと、とくにそれぞれの楽器と合わせなくてはならない箇所がたくさんあるような難しいコンチェルトは、弾けないと思いますよ。



ーコンクールでの演奏ということで、リハーサルで特に気をつけていることはありますか?

 もちろん、まず一番は弾きやすいように振ってあげることです。でもやっぱり、彼らよりは私の方が少し経験があるという意味で、オーケストラと演奏するうえではそこはそうはいかないんだよ...ということは、少しずつ伝えるようにしています。今回はとくに、みなさんよく弾けているからこそ、そうしています。それが彼らに通じているかどうかは、本番を迎えてみないとわかりません。
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ーコンクールで優勝しただけではキャリアが保証されない中、若いピアニストにアドバイスがあればお願いします。

 そんな偉そうなことは言えませんが...。ただ、自分自身も、昔は指揮者のコンクールを受けてきた経験からいうと、優勝できたときの演奏は、コンクールのための演奏ではなかったということです。そうでないと、その後、演奏家として長くやっていくことはできないだろうと思います。
 特に指揮者のコンクールは、審査委員との対決みたいなところがあります(笑)。上手に振れても、自分を審査委員に認めさせないと、賞に入れません。その場合、下手から出てアピールしてもいい結果にはなりません。いわば、参加者のほうが強い立場に立てる、そういう瞬間があるんです。圧倒的にいいと認めさせないと優勝はできませんし、その後が続きません。おそらく、他のコンクールでも同じではないかと思います。



ー音楽で説得してしまうということですか?

 うーん、説得というか、どちらかというと、怒ってるんですよね、これに納得してくれと(笑)。それが自信に見えるのでしょう。そして音楽家は、その瞬間にうまくなるんだと思います。自分が審査をする立場で見ていても、コンクールを受けている間にうまくなっていく人がやはり良い結果を残します。経験がどんどん自分の身になっていく音楽家は、伸びるし活躍できると思います。

 音楽家として長く活動を続けるには、とにかく、与えられたチャンスを一つ一つ乗り越えていくしかありません。それがなければ、次はこない。これは確実です。この歳になっても、私もまだそう思ってやっているつもりです。音楽家としての心構え、意志が見えている人は、やはり強いと思います。


(文・高坂はる香)

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