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2018.11.23 Official Report

【公式】 11/23 本選1日目

いよいよ会場を大ホールに移し、ファイナルの1日目です。

 ファイナルの本番は、指揮者との打ち合わせ、そして本番前々日、当日計2回のリハーサルを経て迎えられます。今年は偶然にも、6名のファイナリストが6曲異なる作品を選んでいたことで、聴き手にとっては楽しいですが、オーケストラのみなさんにとっては少し大変な2日間となりそうです。

 もちろんチケットは完売。アクトシティロビーには、開場を待つ人たちの列が渦をつくっていました。18時からの開演直前の夕暮れどき、若いピアニストたちのさまざまな想いがこもったファイナルの演奏を静かに見守ろうとするように、西の空の低いところに大きな満月が浮かんでいました。

 開演すると、まずは審査委員の先生方の紹介がおこなわれ、続けて演奏がスタートします。共演は、前回のコンクールに続き、指揮者の高関健さん、そしてオーケストラは東京交響楽団です。

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初日に演奏する3名は、全員日本人となりました。

 一人目の奏者となったのは、務川慧悟さん。演目は、19歳の時に初めて弾いたピアノ協奏曲だという、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番です。オーケストラとのかけあいも多いこの曲で、落ち着いてさまざまなタッチを繰り出します。一つ一つの音をクリアに粒立たせて、着実に音楽を盛り上げていきました。プロコフィエフの音楽が持つきらめきを、冷静かつエネルギッシュな音で表現していました。

 二人目は、安並貴史さん。大好きだというブラームスの作品から、ピアノ協奏曲第2番を演奏しました。ブラームスが楽譜に記した音を追いかけていくように、大味にならず、繊細な雰囲気を残しながら音楽を紡いでいきます。コンクールのファイナルという緊張感のなかで、この50分近くにわたる大曲を弾きあげました。

 そして最後の奏者となったのは、牛田智大さん。演目は、中村紘子さんとの思い出がある、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番です。コンチェルトの経験も豊富で、この曲を東京交響楽団とすでに共演したことがあるというだけに、落ち着いた表情でステージにあらわれました。オーケストラには配慮しながら自由に音楽を揺らし、音楽を濃厚に歌いあげます。緊張感のあるパートとロマンティックなパートのコントラストもあり、あっという間の30分でした。

 会場に3人の演奏が客席にもたらした熱気が充満するなか、初日の演奏は終了しました。

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《演奏後の声》

・務川慧悟さん(日本)

ープロコフィエフの3番を演奏して、今のお気持ちは?

 本当に好きな曲で、一時期、朝の目覚ましにしていたくらい好きな曲なのですが、オーケストラと演奏できる機会はそう多くありません。プロコフィエフのオーケストレーションは、魔法使いのようだと思います。その響きを共有できて楽しかったです。僕は室内楽も含めアンサンブルが好きなので、ソロよりそちらに重心を置けといわれたらそうなってしまいそうなくらい、人と弾くことが好きです。

ー6年前に日本音楽コンクールでも演奏した曲ということですが、今回の演奏で何が成長したと思いますか?

 この曲が好きになったのは、小学校高学年くらいのとき、毎日アルゲリッチとデュトワの演奏を聴いていたことからなのですが、それから19歳の時に演奏することになったときに持った印象や感情、風景は、6年経ってもなにもかわりません。頭にあるイメージを形にするという意味では同じですが、それで成長していないということでもなく、ピアノの弾き方はかなり変わりました。

ー中ホールから大ホールにうつり、プロコフィエフの音の出し方として気をつけたことは?

 1次から多彩なプログラムを組んできましたが、プロコフィエフは入れていませんでした。1次から3次までの曲で使っていた筋肉と、プロコフィエフで使う筋肉は全く別物だと思っています。たとえば鋼のような音は、ドビュッシーなどでは使いません。根本的に違う筋肉や技術を整えようと、ファイナルに進むことが決まってからのこの3日間くらい、体をコンチェルトモードにするように調整しました。

ーどんなふうにですか?

 肉を食べたり...もちろん実際には練習でですけど。でも、昨日もステーキを食べました。

ー他のレパートリーなら食べるものが変わるということですか?

 そうですね...これがショパンだったら野菜を食べるのでしょうかね(笑)。

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・安並貴史さん(日本)


ーオーケストラと共演して、感想はいかがですか? 

 オーケストラとの共演は、初めてでした。ブラームスの協奏曲第2番は、ピアノ入りの交響曲といわれるくらい、一つ一つの楽器が全部大切なので、その楽器の一員として演奏しながら、作品とブラームスのすごさを改めて感じました。

 ピアノの音が出るべきところは、大ホールの奥までしっかり聞こえているか、いい音で響き渡っているかを意識しました。舞台の上は響きが感じられないので、どう響いているのか聴くためにもう一人自分がほしいですね。

 凄まじい緊張の中で長大な協奏曲を弾けたこと、それにこのコンクールの1ヶ月を生き抜いたという意味では、自分自身にお疲れさまという思いです。自分の弱点もわかり、悔しい部分もありました。今は、肉体的にも精神的にも、捧げたというか、もっていかれたという気分です。

ー普段のお仕事をされながらのコンクール参加だということですが。

 先日も、自分が教えるレッスンをしたのですが、その日はレッスンのない生徒が来て応援の手紙をくれて、嬉しかったです。私にとっては先生が世界一のピアニストなのでがんばってくださいとありました(笑)。

ー浜松コンクールが安並さんに与えたことは?

 世界レベルの厳しさをひしひしと感じました。みなさん徹底して準備をして、一瞬の本番にかけている。そこに身を投じる中で、ピアノの世界の奥深さを痛感しました。この11月は、1年くらいの長さという体感で、毎日全身に針をさされているような張り詰めた気持ちで、自分自身との戦い続けてきました。また次の一歩を進めていく、よい経験になりました。

ー静岡出身ということで大きく注目されてきたと思いますが、そういったプレッシャーはどのように影響しましたか? 後押しになったか、大変なものと感じられたでしょうか。

 僕はみなさんの応援があり、注目を浴びるほどいい力に変えられるんだなと自分では思いました。今日の協奏曲で感じた緊張感は、作品に対して自分が持っている緊張感だったので。みなさんの応援は、あたたかく私の背中を押してくれました。

ーブラームスの協奏曲で理想とするピアノの音はどんな音でしょうか。

 完全な主役ではない、共鳴する響きを作らなくてはならない部分もあり、また重く深くずっと先まで届くような音を出さなくてはならない部分もあります。今日はちょっとくやしいですね。これからです。

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・牛田智大さん(日本)


ー演奏が始まる前、時間をとっていましたが。

 会場の雰囲気をつくるために静寂をつくることで、曲に入っていくことができます。また、最初の音にふくよかな響きが必要なので、ピアノが十分共鳴できる状態にしておくため、ペダルを踏んで10秒間くらい待っていました。

ーファイナリストの中で、最もコンサートを経験している方ではないかと思います。コンクールということで、いつものコンサートと違う感覚はありましたか?

 コンクールのほうがあまり緊張しませんでした。評価されるというストレスはありますが、とくに1次、2次は、特別な舞台を楽しめている自分がいました。失敗しても自分の問題ですから、素のままの自分で舞台に出ることができたのです。コンサートは責任がかかってくるものなので、第三者的な目線で演奏を見ている自分がいます。音楽と純粋に会話できるのは自分にとって貴重な機会でした。

ーコンクールで得たものは?

 まとまった期間集中して勉強できたことです。コンサート活動を否定したくはないけど、次々と本番があって深めきれないまま舞台に上げることが続くと、欲求不満になります。10代の若いうちは、もっとインプットする時間が必要だったのかもしれません。そして今、10代後半の時期は、音楽的につめていく作業が必要だと感じていました。もちろんそれがコンサートでできないわけではありませんが、コンクールのように、丸裸にされる経験も必要なのではないかなと思ったんです。コンサートは、お客様があたたかく見守ってくださる部分がありますから、自分を批判的な目で見る機会が欲しいと思いました。

 自分に足りないものがあることはわかっていましたし、このままやっていってもレベルアップできないと思いました。そのために必要なのは時間をかけて勉強することです。コンクールという、好意的に見てもらえるとは限らない場所で、そこに向けて準備をすることで成長できると思いました。

ー浜松にはずいぶんいろんな思い出がありますよね?

 初めての思い出は、2011年の311日、浜松アカデミーに最初に参加したときのことです。それまで普通にあった生活が崩れていくことを目の当たりにして、自分は音楽をやっていいのかなと思ったのが浜松でした。そのアカデミーは途中で中止になりましたが、ここで中村紘子先生に出会いました。キャリアのきっかけとなった大切な場所です。

 その次のアカデミーでコンクールに参加して、自分の演奏の質を考えるということを初めて意識しました。僕がこの舞台に立てているのは浜松のおかげで、音楽に関する人生は全て浜松からはじまりました。

ー牛田さんがこの舞台でラフマニノフの2番を弾く子の姿を見たら、中村紘子さんは本当に喜ぶだろうと思うと感慨深いものがありました。それで、ついに紘子さん、降臨しましたか? 

 ......したことにしましょう!

 ラフマニノフは、2番と3番どちらを弾こうか迷ったのですが、紘子先生のおはこですし、2番のほうにしました。

(文・高坂はる香)

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