• 第7回コンクール概要
  • トピックス
  • スタッフレポート

【公式レビュー】第3次予選 1日目後半

2012年11月20日|スタッフレポート

 第3次予選にもなるとやはり注目度が高い。昼間から会場はほとんどいっぱいだったが、午後になってますますたくさんの聴衆が客席を埋めていた。


 オシプ・ニキフォロフさん(ロシア/18歳)も、モーツァルトのピアノ四重奏曲は第1番ト短調を選択。冒頭からぴったりと息を合わせて、対話する。とてもナチュラルに、ピアノが表に出ては背後にまわる。愛らしい抑揚もとても自然だ。共演者と握手をして、にこやかに演奏を終えた。

 リサイタルはドビュッシーの「版画」を、彼独特のひそやかな音色でスタート。淡い水彩絵の具で写しとられたような版画だ。最後を印象的に響かせて、ブラームスへ。音色を変えて、新たな一面を見せる。拍手が沸くも、集中をキープするようにそのまま次の曲、リストの「死の舞踏」へ移った。冒頭の音をとても大切に奏で、そこから自分の持つ限りのさまざまな音を次々に並べるかのように、狂気もはらんだ情景を描いてみせる。終盤のこだまするような音の表現力には驚く。最後の音はユーモラスに締め、客席からクスリとする笑いを誘って演奏を終えた。

20121119011sr.jpg

◇演奏を終えて……

─ステージはいかがでしたか?

なんだかすごく疲れました。ちょっと理由はわかりません。

─室内楽は楽しめましたか?

とてもよかったです。協力的ですばらしい共演者の方々でした。

─聴衆の反応は感じましたか?

 はい。ブラームスのあとに拍手があったから、そこで改めて反応を感じたんですけど。あれ、みんなはお辞儀していたの? 僕はちょっと集中していたから……。

─最初のステージから3次予選までを振り返って、コンクール全体の印象は?

 僕にとってはこれが初めてのメジャーなコンクールへの挑戦ですから、多くの経験が初めてでとてもおもしろいです。年齢にかかわらずみんなが一緒に交流し、異なる文化を交換するという経験は、僕にとって音楽的に大きな一歩です。とても嬉しく思います。

─本選で演奏予定の作品にはどんな想いがありますか?

プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番を演奏します。音符以上に音楽の持つコンセプトが壮大で、コンクールで演奏するには、感情的に、肉体的にとても大変です。聴衆のみなさんにとっても、存分に楽しむことのできる作品でしょう。現代的なものと同時に伝統的ムードもある、魅惑的な作品だと思います。
20121119010sr.jpg
 



ロマン・マルチノフさん(ロシア/20歳)は、冒頭から豊かな音を鳴らすモーツァルトのピアノ四重奏第1番。弦楽と合わせつつ、骨太な音楽が進んでゆく。ピアノがぐいぐいとひっぱってゆく印象だ。演奏が終わると、共演者を気遣いながらふんわりと袖に戻ってゆく。

 リサイタルは、メトネルのソナタ第7番「夜の風」1本勝負。つまり、約30分超のこの1曲だけを演奏するというプログラムだ。とても好きな作品で、しかし他の小品と合わせるのは音楽的に良い考えでないという判断で、こうしたプログラムにしたという。

 力強く、夢のようで、色でいうと濃紺が思い浮かぶ。硬質な音が台地を踏みしめるように、また、憂いのある音が音楽に哀愁を漂わせて、音楽が進んでいった。音楽と1対1で立ち向かう姿を見せつけられるような、何か内に向かっていく演奏だった。

20121119013sr.jpg
 



本日最後のコンテスタントとなったアンナ・ツィブラエワさん(ロシア/22歳)。彼女のモーツァルトのピアノ四重奏曲 第1番は、本日5回目の演奏となったが、今日1日すべて聴いた人には、演奏者が違うだけで印象が変わることを感じた筈。気品漂う、まろやかな響きのモーツァルトだった。

モーツァルトからスクリャービンのピアノ・ソナタ 第4番に入る前のインタバルは雰囲気の切り換えのためにも効果的だった。ステージに戻って来てからもピアノの前で充分時間を取った彼女は、スローモーションのように鍵盤に手を近づけて演奏が始まった。演奏もゆったりとしたという表現よりも、けだるいといった方がしっくりくる。しかしそれは大きくジャンプする前に少しかがむのと同じ、第2楽章へ飛ぶための助走だったようだ。

シューマンの交響的練習曲がこれまた充分な間合いの後始まったが、すっかり気分を変えてうら悲しささえある演奏にしばし浸る。うら悲しさは残しつつ、だんだんリズミカルへと曲調が移り、そんなバリエーションを楽しんでいると、あっという間のフィナーレだった。「えっ、もう終わり?もっと聴きたかったな」と思えるほど、時間の経つのが早かった。
20121119014sr.jpg


◇演奏を終えて……

―モーツァルトの室内楽、演奏してみていかがでしたか?

 準備に時間がありませんでした。そのような中であのような演奏が出来たということは、ベストだったと思います。一緒にやった演奏者には、とても感謝しています。室内楽をやるということはピアニストにとって、他の音を聴くという点でも、音楽教育の点からもとても重要です。

―モーツァルトの後、いったんステージへ下がって、さらにピアノの前に座ってからもかなり時間を取られているように見えましたが……。

 はい、時間を取りました。演奏スタイルの切り換え、そして会場の雰囲気を変えたかったのです。それは私のためでもありますし、観客のためでもあります。

―スクリャービンとシューマンの間に時間をかけたのも、同じ理由からでしょうか?

 準備の時間が必要でした。他の形へ、音、演奏スタイルを変える。観客にもそれが必要だったと思います。他の演奏者を見ているとすぐに次の演奏に入る人がいますが、場合によってはどうして間合いを取らないのか、ここは取るべきでしょうと思う時があります。

高坂はる香(ニキフォロフ/マルチノフ)
角田珠実(ツィブラエワ)                    

 
 
 

 

  • 一覧へ戻る

主催

  • 浜松市
  • 浜松市文化振興財団

特別協賛

  • ANA
  • 遠鉄グループ
  • JR東海
  • KAWAI
  • Roland Foudation
  • 三立製菓株式会社
  • YAMAHA
〒430-7790 静岡県浜松市中区板屋町111-1 公益財団法人浜松市文化振興財団内  TEL:053-451-1148  FAX:053-451-1123
MAIL : info@hipic.jp URL : http://www.hipic.jp
Copyright (c) Hamamatsu International Piano Competition.
All rights reserved.
Powerd By Ultraworks