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【公式レビュー】第3次予選 1日目前半

2012年11月20日|スタッフレポート

 いよいよ、12名のセミファイナリストが選ばれた。今回のコンクールから初めて、第3次予選で室内楽が課題に取り入れられた。コンテスタントは、モーツァルトのピアノ四重奏第1番、第2番から好きなほうを選ぶ。リサイタルを加えて計70分のプログラムだが、ソロと室内楽どちらを先に演奏するかはコンテスタントの任意だ。

四方恭子さん(ヴァイオリン)、松実健太さん(ヴィオラ)、河野文昭さん(チェロ)のチームと、漆原啓子さん(ヴァイオリン)、鈴木康浩さん(ヴィオラ)、向山佳絵子さん(チェロ)のチームという2組が、交互にコンテスタントと共演する。 


 “浜松コンクール史上初”の室内楽演奏コンテスタントとなった、阪田知樹さん(日本/18歳)は、第1番ト短調を選んだ。穏やかな弦楽器の中、はっきりとしたピアノの音を響かせる。3楽章になると徐々に音がなじみ、快活な音楽を展開する。

続いてリサイタルのパートに入る。ドビュッシーの12の練習曲では、シックな色がたくさん乗った音のパレットを使って、さまざまな世界を描いて見せる。そして、アルベニスの「イベリア」。切なげな音の中に、時折音が効果的にきらめく。叙情的な演奏だ。

ベッリーニ=リストの「ノルマの回想」では、得意の豊かな音を響かせて、知的でドラマティックな音楽を奏でる。集中力の高い演奏で、音楽を大きく盛り上げた。

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◇演奏を終えて……

─3次のステージはいかがでしたか?

自分にとってはタフなプログラムでした。室内楽だけを演奏する経験はありますが、ひとつのステージで室内学とリサイタルを一度に演奏するということはこれまでなかったので。

─室内楽のリハーサルはどうでしたか?

共演してくださった先生方が、弾いているだけで僕の考えをくみ取ってくださるすばらしい演奏家ばかりだったので、とてもやりやすかったです。僕も無礼ながら(笑)いくつかリクエストをさせていただいたりしました。リハーサル時間も充分でした。

─昨日のリハーサルは朝8時半からでしたね。

体力勝負でしたね。意識がない中で弾いているような……。幸い今日は12時半からだったのでよかったです。

─常に一番手で演奏されているお気持ちは?

嬉しかったのは、池辺晋一郎先生の新作を世界で初めて弾けたことです。

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─興味深いプログラミングでしたが、どのように選ばれましたか?

ドビュッシーのエチュードは、リサイタルでまとめて演奏する ことは少ないと思いますし、技術的にも難しいですが、好きなので選びました。今年スイスのルガーノで行われたドビュッシーの生誕150年のプロジェクトに 参加したときに演奏しました。ドビュッシーは好きな作曲家のひとりでもありますから、思い入れのある作品です。

─そこからアルベニスをはさみ、最後は「ノルマの回想」で盛り上げましたね。

大好きなリストを最後に持ってこようと思ったときに、印象派のドビュッシーからいきなりリストに行くのは違和感があるのではないかと思い、アルベニスをはさ みました。アルベニスは、リストに少し習ったこともあると言われ、技術的な面でも近いものがあると感じます。フランスに長く住んでいたので、印象派の要素 も含んでいるのではないかと。「イベリア」が単純に好きだということもあります。

─そして「ノルマの回想」。オペラがお好きなのですか?

も のすごく好きです。マリア・カラスの歌うノルマが好きでよく聴いていました。去年亡くなられたニコライ・ペトロフ先生に招待してもらったクレムリン音楽祭 のリサイタルでも、最後にこの作品を演奏し、喜んでいただいた思い出があります。僕が初めて取り組んだオペラ編曲作品で、思い入れも強いんです。

─本選で用意されている作品についての想いをお聞かせください。

ま だ結果は出ていませんが……ファイナルに用意しているのは、ラヴェルのト調のピアノ協奏曲です。ジャズ的要素を含んだコンチェルトは、僕の得意なレパート リーのひとつです。クラシック音楽の中でも、古典的なものばかりではなくて、ガーシュウィンなど、少し違った要素の入った作曲家の作品も好きです。ラヴェ ルのト調の協奏曲も、そういう作品が勉強したいと思って選びました。
 



 

内匠 慧さん(日本/20歳)が演奏したモーツァルトのピアノ四重奏曲第2番は、12人のコンテスタントの中で演奏する人が4人、そして今日この曲を演奏するのは内匠さんただひとりだった。私とは正反対の明るい曲と自虐的にインタビューでは応えていたが、弦の奏者に寄り添うような演奏が内匠さんらしいやさしさを醸し出していた。ピアノと弦の掛け合いも楽しく聴かせてもらった。

次はヘンデルのシャコンヌ。モーツァルトの余韻を楽しんでいた観客に、心地よく美しい音を舞いあがらせた。その曲から続けて演奏に入ったのはババジャニアンの6つの描写だったが、すごくノリの良い演奏にこちらの気分も弾んでくる。6つの表情が明確に伝わって来た。今度は一度立ち上がって観客にあいさつし、ステージを去ろうとしたときに「ブラヴォー!」の声がかかる、納得の演奏だった。

再びステージに登場して、ショパンの幻想曲と即興曲が続いたので、ショパンの世界がホールいっぱいに広がった。最後の曲はバラキレフのイスラメイだが、勢いよく始まって、一瞬のうちに観客を圧倒した。いいテンポでメリハリもあって、軽やかにステップを踏んでいるようだ。テクニックを見せてくれただけでなく、聴かせるところはたっぷりと響いて、曲の魅力を伝えるセンスも充分うかがえた。しなやかな演奏でイスラメイが終わると、再び「ブラヴォー!」の声がかかる、きっと彼の耳にも届いたことだろう。
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◇演奏を終えて……

―第3次予選を終えての感想をお聞かせください。

 前に弾いた2回より気持ちは楽しんで弾けました。最初に室内楽をして、4人で出た分プレッシャーは少なめでした(笑)。モーツァルトの室内楽はリハーサルよりだいぶ良かったと思います。ヴィオラの方が本番が一番良かったと言ってくれました!

―2曲目のヘンデルはいかがでした?

 ヘンデルはリラックスして入れたのですが、いざ始まってみると細かいミスもありまして……。リピートしなくていいところを繰り返してしまいました。本当はミスなく、パリッと行きたかった。これで拍手をもらうのは申し訳ないと思って、立ち上がらずに次の曲を続けて弾いたのです。 

―ババジャニアンはいかがでした?

 そんなに悪くなかったと思います。即興的に弾くような感じになったのですが、現代曲を弾くと会場がざわつくことが多いのですが、静かに聴いてくれて、すごく励まされました。前に弾いた時は3番を含めてゆっくりと弾いたのですが、今日は3番のテンポをだいぶ上げてジャズのテイストを感じていました。

―曲の最後にブラヴォーと声がかかったのですが、聞こえてました?

はい、聞こえました。ブラヴォーの声に励まされ、助けられました。

―ショパンはどうでした?

座ってすぐに弾こうと思っていたら、イスが後ろだったので出来なかった(笑)。幻想曲は会場が静かに聴いてくれたので、ミスもあったが悪くなかったと思います。即興曲はうまく緊張感を持って弾いて、“ここで聴かせよう”と思いましたがうまくいきませんでした。

―イスラメイでもブラヴォーをもらいましたね!

イスラメイは手が痛くなったので、最後まで弾けるかなと心配になりました。中間部は少しテンポを落として、最後の「狂って!」という指示のところは、雰囲気を出すようにしました。最後のブラヴォーには本当に励まされました。何とか聴かせられるようにと頑張った甲斐がありました。
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  アシュレイ・フリップさん(イギリス/23才)が選んだモーツァルトは、ピアノ四重奏曲第1番ト短調。ドラマチックに聴かせ、モーツァルトの遊び心も感じさせてくれる楽しい演奏だった。格調高く弦をリードするピアノを聴いていると、彼はピアノ奏者であり、指揮者であることが充分理解できた演奏だった。

バッハのフランス組曲では、美しいメロディに魅了されて会場が静まり返った。テンポもちょうどいいせいか、フリップさんの奏でるピアノが聴く人の心を浄化するように神々しい。ここでいったん退場、バルトークへ入る前に休みを入れたのは、2つ組曲が続くのを避けたという狙いもあるだろう。そのバルトークは、音がきめ細かくて、粒が揃っているので端正で、粗さがない。この曲も完成度が高かった。

最後に弾いた「死の舞踏」は連打からのスタート。何かが起こりそうな予感を与えて繰り返されるグリッサンドも、未知なる世界へ誘うような響きだ。速いパッセージも正確だから聴きやすい。ラストが近づくにつれて、演奏もダイナミックで情熱的、なのに荒削りにならないところがフリップさんらしかった。

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◇演奏を終えて……

―第3次予選の演奏を終えて、いかがでした?

 最初に他の人と一緒に演奏するのは、一人じゃないという心強さもあって、リラックスできてよかったです。室内楽という課題はありましたが、それ以外は自由な選択だったので、まさしく自分自身でいられたので、楽しんで演奏することが出来ました。室内楽は大好きですし、私の重要な音楽活動の一つでもあります。そして、モーツァルトは、もっとも好きな曲の一つです。

―フランス組曲、素敵でした。

 演奏していて、難しいパッセージが来る前に、「ああ、次に来る、どうしよう!」という感じが2度あったのですが、一回目はフランス組曲でした。なぜだかわかりません、多分緊張していたのでしょう。バッハのフランス組曲とバルトークの組曲は全く違うものを対照的に聴かせたかったので、2曲の間ステージを下がって少し時間を置きました。そこで水を飲めたのもよかったです(笑)。

―最後に全体的な感想をお願いします。

実は第1次予選さえ受かるとは思っていなかったので、練習しなくてはという思いが頭をよぎりました。と言っても、ちゃんと食事はとりましたけどね。今は演奏し終わってお昼が食べたい(笑)!とにかくいい経験でした。

コンクールは受かるかどうかわからない、宝くじのようなもの。一番いい演奏をしても受からなかったり、ひどい演奏だったのに受かったり、審査委員がどう思うかですから。ですからファイナルがどうなるかはわかりません、もちろん受かればいいと思っています。素晴らしいオーケストラのもとでコンチェルトを演奏するのは、感動的な経験ですからね。

観客には、私自身の印象というより、どんなに音楽を愛しているか、音楽についてどう表現したいかを感じ取ってほしいと思っています。

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高坂はる香(阪田)           
角田珠実(内匠/フリップ)

 

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