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【公式レビュー】第2次予選 3日目後半

2012年11月18日|スタッフレポート

 いよいよ2次予選も最後のブロックだ。4時間後には結果発表が行われるという中での演奏スタート。土曜日の午後ということで、悪天候にもかかわらず多くの方が会場で演奏に聴き入っていた。

 アレクセイ・タルタコフスキーさん(アメリカ/23歳)は、池辺作品からスタート。寒々しい空に伸びる力強い木立を見上げるような景色が、目前に浮かんでくる。ショパンのエチュードに続くソナタ第3番は、主張を感じる冒頭の音楽に期待が高まる。ショパンの男性的な側面が強調された、ところどころに個性的な表現を含む演奏。自分の言葉を持った音楽が、新しいショパンの姿を見せてくれた。続くラフマニノフの前奏曲作品32-5からうなだれて間合いをとると、前奏曲作品23-2へ。作曲家の心情を写しとったかのような強さと哀しさを持つ。今後が楽しみな、魅力的な音の持ち主だ。
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 佐藤卓史さん(日本/29歳)は、ベルクのソナタ作品1から。巧みに音色が使い分けられ、とても立体的。闇と情熱、そして作品の持つ屈折までもが描かれた深みのある演奏だ。そこから美しい流れで池辺作品に入る。脳に直接ささるようなインパクトのある音を随所にちりばめ、聴く者を引きつける。ここでがらりと雰囲気を変え、豊潤な音で奏でるショパンのエチュード10-1。続けてシューマンの交響的練習曲へ。シューマンのリズムと和音がごく自然に展開する。美しく、過剰な装飾のない誠実な音楽が、胸の内を吐露するような演奏だ。再び、コンクールだということを忘れる時間だった。

 休憩をはさんで登場したチュウ・ハオさん(中国/26歳)は、ラフマニノフの楽興の時作品16より始める。冒頭、印象的な弱音だ。初めの音のインパクトの大切さを改めて感じる。安定した演奏の中で、静かなラフマニノフが徐々に熱を帯びてゆく。そして、ショパンへ。エチュード10-8からバラード第3番を演奏。ひとつひとつの音に意味を持たせながら、端整な表現をする。池辺作品は、音楽に入り込んだナチュラルな演奏。間をおいて、リストの超絶技巧練習曲第8番で一転ロマンティックな和音がインパクトを与える。初めの音に勝負をかけていそうなピアニストだ。何かが降臨したかのような超絶技巧と大音量で、彼の持つもうひとつの側面を示した。
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最後の奏者となったソ・ヒョンミンさん(韓国/22歳)は、偶然ながら、続くリストの超絶技巧練習曲第9番からスタート。穏やかな抑揚で実にスムーズな演奏。ショパンのスケルツォ第3番は、ドラマティックだが統制のとれた表現に好感が持てる。池辺作品をはさみ、ラヴェルのラ・ヴァルスへ。やわらかなガーゼのような音、オーケストラが一斉に鳴るような音などはっとする表現を随所に見せながら、優美な音楽を創る。ヒョンミンさんも、端整なピアノを弾く安定感のあるピアニストだ。


◇演奏を終えて……


佐藤卓史さん

─2次予選では、何人かの方がベルクのソナタを演奏されました。中でも佐藤さんの演奏はとても深みのあるものでした。演奏中はどのようなイメージを持たれていたのですか?

このソナタはベルクが初めて出版した作品です。当時ベルクには、後に妻となる女性との結婚について、悩みや葛藤がありました。今ウィーンに住んでいるので、ベルクの住んだところに行ってみるなどしてイメージを膨らませ、ベルクはこんな人だったのだろう……という想いを持ちながら演奏しました。

─1次のステージと比べ、2次はいかがでしたか?

全体の中で、自分では2次のプログラムが一番難しいと思っていました。いつもよく弾いている曲をあまり入れなかったのです。それに、わりと激しく、集中力の必要な曲が続くので大変かなと思っていました。ショパンのエチュード以外はコンクールで弾くのが初めてでした。1次はこれまで弾いてきた作品をさらに磨くという感じだったのに対して、2次のプログラムは挑戦という感覚でした。

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─池辺作品はどのような理解をされていましたか?

詩がついていたので、それをひとつのインスピレーションとして演奏しました。同じ詩を読んでも、池辺先生が感じたことと僕が感じたことは違うかもしれませんが。透明感のある部分、心の内面を映す部分が、場面ごとに転換してゆく。その両方を一体化させていくというのではなく、ブロックごとに性格をガラリと変えて演奏してゆくというイメージでしたね。

─最近の録音を聴いたときにも思いましたが、数年前と大幅に演奏の印象が変わりました。

先生も変わり、ウィーンに移ったことで、音楽に関する意識もいろいろ変わったのかもしれません。

─それではそのあたりの話はまた次のステージの後に!

 




ソ・ヒョンミンさん

─ラ・ヴァルスでは大いに聴衆を引きこみましたね。

みなさんが集中して聴いてくださったようで嬉しかったです。自分ではそんなふうになってもらえるほどうまく演奏できていたと思わないので……。もしかすると日本の聴衆はみんないい人だからかもしれません。

─1次と比べ、2次のステージはいかがでしたか?

1次ほどは安心感がありませんでした。でも、とにかく終わったのでよかったです。

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─日本人作品が大変だったからですか?

全然そういうわけではないんですが。なんだかよくわからないですが、今日は落ち着かなかったんです。

─池辺作品はどのような理解をされましたか?

理解するのはとても難しかったです。最初のページにあった作曲者のコメントを読んだことが少し助けになりましたが。

─最後の奏者となったのはいかがでしたか?

すごく大きなストレスでしたよ!

─今ジュリアードで勉強されているのですね。

はい、アックス先生とラエカッリオ先生のふたりに師事しています。2009年からコロンビア大学のエクスチェンジ・プログラムでジュリアードに通うようになり、今年は修士の1年目です。



高坂はる香

 

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