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【公式レビュー】第2次予選 3日目前半

2012年11月18日|スタッフレポート

朝から雨。あっという間に第2次予選の最終日が来てしまった。短い期間ではあったけれど、コンテスタントが全身全霊をぶつけてくる演奏を堪能する、濃密な3日間だった。さて、誰が第3次予選に進むのか。

  スタニスラフ・フリステンコさん(ロシア/28歳)の池辺晋一郎による「《ゆさぶれ 青い梢を》ピアノのために」は、研ぎ澄まされた音で観客を惹き付けた。最後の1音、sfffを創りだす時にコンテスタントの個性が出る。第2次予選で義務付けられているエチュードは、スクリャービンを選択し、もの悲しく響かせた。ショパンのマズルカも趣があったが、フリステンコさんの覚悟の1曲は、ラフマニノフのソナタ 第2番 変ロ短調だったと思う。メリハリの効いた第1楽章。第2楽章は時が止まったかのようなアダージョでまどろんだ。3楽章では華やかさを出し切って演奏を終えた。観客に応えて2度お礼、この誠実さがフリスチェンコさんだ。
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  實川 風さん(日本/22歳)は池辺作品を演奏する前に一度精神統一してから入ったように見えた。小気味いい音、池辺作品への周到な準備がうかがえる。パフォーマンスとしても魅せた。次にショパンの練習曲 へ短調、私の好みとしては、次はドビュッシーか、もしくは池辺を後にしてシューマンと続けてほしいところだったが、演奏自体は實川さんらしさがちりばめられてよかったと思うシューマンの交響的練習曲は、悲しい響きにもとれる序盤から終結部の盛り上がりへ。何度も繰り返されるメロディがあたかも別れを告げるかのようにこの曲を締めくくった。

  中桐 望さん(日本/25歳)は渋みのある赤いドレスで登場、陰影のある玉虫色だ。最初に弾いた池辺作品は高音の主張が際立って美しい。青い梢をゆさぶる風が吹いているとしたら、その風は妖艶だ。次にラフマニノフで一呼吸おき、情緒たっぷりと弾いた。そしてドビュッシーはリストへの静かなる序章となって、お互いの曲を活かし切っていた。たっぷりとドビュッシーの世界に浸った後、壮大なリストへの切り換えは見事だった。そこここに中桐さんの思いのこもった音がちりばめられて、きれいな音を楽しませてくれた。

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シュ・ガーフイさん(中国/21歳)の池辺作品は、音がホールいっぱいに響き渡って、空間の拡がりを感じさせた。最後の駆け登った後の1音は、さりげなかった。次にリストの超絶技巧練習曲 第5番「鬼火」を挟んでのラヴェル「夜のガスパール」は、どことなくテイストが池辺作品に寄り添うところがあって、意外な発見だった。厳かな始まりでしっとりと聴かせてくれた。そして、リストのハンガリー狂詩曲 第2番で、ガラリとムードを変えたが、テンポもよく、許せる範囲内での遊び心がタッチにあって、楽しめた。望郷の思いに駆られた人もいるのではないか。
 


◇演奏を終えて……

 

實川 風さん

―まず、演奏を終えての感想をお聞かせください。

 終わった後でいうと言い訳になるからあまり言いたくないのですが(笑)、集中できないまま終わった気がします。午前中の演奏だから早く起きようとしたのですが、脳が目覚めてくれなかった!全部の音を客観的に聴けませんでした。

―池辺さんの曲の感想をお聞きしたいのですが。

  邦人の作品の初演を結構やらせてもらっているのですが、池辺作品は最初古めかしく感じたのです、オールド・ファッションだなと……。でも、詩を読んでみた ら、機械的なものを求めているのではなく、詩の持っているみずみずしさとか感情を求めているということがわかりました。後期のロマンチックな音楽のよう に、感動した気持ちがこもっているように弾いた方がいいのだと解釈しました。

―演奏順がプログラムに書いてあるのと変わりましたね。

 池辺作品の後、ドビュッシーにしようかと迷ったのですが、ショパンにしました。

―池辺、ドビュッシー、ショパン、シューマンと弾くか、ショパン、ドビュッシー、池辺、シューマンというのもいいように思います。

 そうですか、やはりドビュッシーを先に弾くべきだったかな……。

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―そこはアタックチャンスでしょう!“なぜカドを取らない?”

うわはっ、そうだったんですか!



 

シュ・ガーフイさん

―演奏はいかがでしたか?

 とても緊張しました。気分を立て直そうと頑張ったのですが……。昨日すごく練習したんです。今朝も9時半から!それがよくなかったみたい、練習をしすぎました(笑)。

―シュさんの演奏を聴いていて思ったのですが、池辺作品とラヴェルの「夜のガスパール」、テイストが似ていませんでした?二つを一緒に弾いたことでそれぞれが引き立っていました。

 私もまったく同じことを考えていました!(弾く真似をして)こういう感じがね!演奏する時、青い梢って、どんな木なんだろうと考えながら演奏しました。練習している時、他の人の演奏が耳に入ってきて、それぞれ違うなと思ったりしていました。

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―リストのハンガリー狂詩曲 第2番を選んだのは何か理由があるのでしょうか?

 小さいころ私が見たディズニー映画で、猫がこの曲の一部をピアノで演奏していて、それがずっと記憶の中にあったのです。そしてネズミがピアノの中に入っていて、いろいろやらかすんです。

―それって、「トムとジェリー」だと思いますよ(笑)。日本では、かつて週一で放送されていました。

 そうだったんですか!

*シュさんは肩を出した黒いドレスで登場、髪をひっつめに結んだおかげで後頭部のラインがくっきり、きれいなカーブを描いていました。

 

角田珠実

 

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