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【舞台裏から】コンクールは人生の縮図?

2012年11月13日|スタッフレポート

12日最終ブロックに登場したふたりのピアニストから
片田愛理さん、ドミトーリ・オニシチェンコさん

コンクールではさまざまな新しい演奏に出会いますが、以前聴いたことがあったピアニストの演奏に再会できることもひとつの大きな楽しみです。

 片田愛理さんの演奏は、2010年、ショパン生誕200年の年にワルシャワで開催されたショパン国際ピアノコンクールのステージで聴きました。彼女は当時18歳。モノトーンのふんわりした膝丈のドレスに、真っ赤な手袋をはめて、緊張した面持ちで舞台袖に立つ姿を、今でも印象深く覚えています。しかしステージに立つと一転、堂々としたフレッシュな演奏を聴かせてくれました。

 今回、浜松コンクール1次予選3日目に登場した片田さんは、当時のフレッシュさそのままに、感情表現の幅がぐっと広がっていました。ハイドンのソナタはまるで春の野原をうきうきとかけるような幸福感あふれる音楽で、聴いていてついほほえんでしまいます。そしてショパンの舟歌では、夢見るような切なく美しい世界が伸びやかに描かれていて、感動してしまいました。うーん、これはこの2年の間に心を大きく成長させる何かがあったに違いない……と思わずにはいられない演奏。

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しかしご本人いわく、ステージではずいぶん緊張していたとのこと。

「私はクセで演奏中客席のほうを向いてしまうのですが、そのときにお客さんの顔を見ると安心できるんです。だけど今日は照明が暗くてよく見えなかったので、安心できずに余計緊張してしまいました。自分としては、納得のいく出来ではなくて、もっとやりたかった、という気持ちです……」

 舟歌を選んだ理由については、「すごく弾きたいと思っていた曲。でも苦手な分野の作品でもあるので、これを弾いて1次予選を通ることができたら自信になると思って選んだ」とのこと。あえて1次から攻めの姿勢でゆく。緊張したと口ではおっしゃっていましたが、度胸たっぷりの20歳です。

 小柄な彼女はかなり高めの椅子に腰かけて演奏していました。そのピアノの音がまた演奏にぴったりと合うイメージだったことも印象的。

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「10分間のピアノ選定では、一番自分の求めている音がしたカワイのピアノに、ほとんどパッと決めました。コンクール中にどんどん音が成長していっ ている感じがします。昨日も他の方の演奏を聴いたらすごくいい音がしていたので、今日は安心してピアノを信じて演奏することができました」

 次のステージもきっと客席の照明は暗いままだと思いますが、緊張しすぎずに良い演奏ができると良いです。


そして、今回浜松コンクール参加が3回目となるオニシチェンコさん。日本でもおなじみのピアニストですから、注目している方も多いのではないでしょうか。
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大柄の彼は体をほとんど動かすことなく、しかしどっしりと重い音を鳴らします。終演後、汗ひとつかかず爽やかな表情のオニシチェンコさんに、まずはこの日の演奏について尋ねてみました。
 
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「今日は、今までの人生のさまざまなコンクールの1次予選の中で一番気持ちよく弾けました。もちろん、結果はどうなるかわかりませんが。もしかしたら、ショパンのノクターンなど、感情的でありながらとても静かな音楽を選んだことがそう感じさせてくれたのかもしれません。
  このショパンのノクターン第13番は、ショパンの中でも最も好きな作品のひとつです。美しく、難しく、それでいて演奏時間も短いというすべての観点でぴっ たりの作品だったので選びました。とても多くのことを求 められる作品です。技術的には左手と右手のバランスを完璧に保たなくてはならず、精神的には、悲劇的で感情的なものを描かなくてはならない。この両方の点 で音楽を確立することは、一朝一夕には可能ではなく、一度確立したら今度はそれを保つことも難しい。だからこそ、僕にとって永遠の作品です。ショパンは天 才です。演奏するにはたくさんのものを費やさなくてはなりません」

 

すでにさまざまなコンクール経験のあるオニシチェンコさん。この7月にも、シドニー国際ピアノコンクールで3位に入賞したばかりです。そんな中で、今回浜松コンクールに参加した理由を尋ねてみました。

「初めてこのコンクールに参加したのが9年前。年齢制限で今回が最後になるので、人生で3回このコンクールを経験してみるというのも面白いなと思って。それに、単純に浜松コンクールが好きなので。

コンクールというものは参加することで演奏を磨く機会になります。それに、なにかひとつの人生の縮図を経験しているような気がするんです。だって、人生ってコンクールのようなものでしょ?」

 えっ……人生がコンクールのようだなんて、なんと厳しい! そう思ってつい「そんなふうに思うんですか!?」と口を挟んでしまうと、こんな答えが。

「まあね、もっと別の見方をすることもできると思いますけれど。ある視点からいくと、やはりそうだと思います。古い友達、新しい友達、そして、演奏を聴いてく れる教授たち、聴衆、すばらしい質に仕上げた良い音楽、作品と演奏に挑戦し続けるということ。これらはすべてピアニストの人生にとって常に必要なものです から」

 ……そうでした。芸術家は常に高みを目指し、何かと戦っているのでした。ピアニストの人生とは、美しくも厳しいものです。尊敬。

そんなことを考えつつ、自分自身も生きていく中でそんな向上心は常に持っていなくてはいけないなぁ、なんて思うのでした。
 

高坂はる香

 

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