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【公式レビュー】第1次予選 3日目後半

2012年11月13日|スタッフレポート

  これまで第1次予選初日、2日目、3日目とコンテスタントの演奏を聴いてきて思うことは、さすがに誰もが上手いということである。後で感想を聞けば、必ずミスを犯したことを先に挙げて反省を始めるが、これだけは言いたい。演奏者が思っているほど、聴く私たちはそのミスを気にしていないということだ。コンテスタントの表現力、テクニック、どれをとってもその小さなミスを凌駕して、演奏の素晴らしさだけが心に残っている。演奏を味わうとは、そういうことではないだろうか。

  ミハイル・モロゾフさん(ロシア/25歳)は、浜コン3度目の挑戦!出場資格を得るだけでも大変なこのコンクールに続けて3回出場する、それだけでもすごいことだ。敬意を表したい。最初に弾いたバッハは1音1音がきれいに出て、モーツアルトは絢爛な響き。もちろん私たちも彼のピアノに聴き入っているが、彼自身が余裕をもって聴いて確認しながら弾いているようだった。納得した音だけを私たちに届けてくれた。最後に弾いたショパンの幻想曲は、出だしが中田喜直の「雪の降る街を」を知っている人にはすんなりと入ってくる曲だろう。

  ハン・ジウォンさん(韓国/25歳)のバッハは透明感のある音、ト短調の憂いを含んだこの曲の持つ美しいメロディを、教会で聴くイメージでその音の響きを楽しんだ。そして長調のハイドンを間に挟み、再び短調。ショパンのバラード第4番はテンポもよかったので聴きやすく、決められたテンポの中で少し遊びがあって、それがいい余韻として伝わってきた。成熟したバラードを聴かせてくれた。

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  鈴木宏英さん(日本/18歳)の清楚な音で始まったバッハの平均律 第1巻、嬰ト短調は、誠実な響きに心が洗われるようだった。意外と日本人好みのメロディラインではないかと思っているので、18歳の鈴木さんもすでにそこら辺を考えての選曲だとしたら、渋い。その素直な音はそのままに、ハイドンのソナタ ハ長調ではとても楽しい気分で聴かせてもらった。軽快なメロディにこちらの気分も弾んでくる。何より本人が楽しく弾いているのがよかった。しかし一転して、ショパンのスケルツォ 第3番では、ドラマチックに曲を盛り上げてコーダへとつなげるしたたかな表現力を持ち合わせている。

  片田愛理さん(日本/20歳)は、演奏スタイルに独特の個性が!高めの椅子に浅く腰かけ身体をピアノにゆだね、弾く手の動きも大きいが、その動きで間合いを取っているかのようだ。3曲とも長調で揃えたところが、片田さんのこだわりだろうか。特にハイドンの演奏にはかわいらしさがあって、楽しくなってくる。バッハの平均律 第2巻、ハイドンのソナタ 変イ長調と無難に古典をこなし、ショパンの舟歌で、私たちを船旅へといざなう。水面が輝いている午後の旅を思わせ、聴きなれた繰り返しがだんだんと心地よく船酔いもすることなく目的地に到着したようだ。
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イリヤ・ラシュコフスキーさん(ロシア/27歳)は、プログラムのオーダーをがらりと変えて、最初はショパンのポロネーズ 第13番から始めた。清らかな美しいメロディに惹き込まれてしまった。そしてその後少し時間をおいて、古典の世界へと私たちを誘ってくれた。バッハは音の歯切れがよく、左手がしっかりした音で存在感があった。シューベルトの即興曲があまりにも切なくて、一音も聴き逃すまいと聴く方も集中することが出来た。
優雅なテンポが本当に心地よかった。

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  ドミートリ・オニシチェンコさん(ウクライナ/29歳)は、ミハイル・モロゾフさんと同じく浜コンは3回目。抑え気味に演奏したバッハは神々しくさえある。抑制されたバッハの美しさがあった。そこからの速い後半部分への切り替えは見事で、集中している様子がうかがえる。モーツァルトは粒の揃った音、左手がよく歌っていて、ぐいぐいと心に迫ってくる。短調のモーツァルトからの、ショパンのノクターン 第13番は心憎いばかりの演出だ。さらに言えば、今日は嬰ハ短調、イ短調、ハ短調とすべて短調でまとめたオニシチェンコさんの繊細さが垣間見える。

  シェン・ジウミンさん(中国/21歳)は、第一次審査の3日目最後の演奏者だ。バッハの前半部分を慎ましやかに始め、後半部分は軽快にまた違った味を楽しませてくれた。その後に弾いたベートーヴェンは、長さを考えて1楽章、2楽章と続けて弾いたが、二つをうまくまとめて美しく、優雅だった。リストの“「伝説」より 波を渉るパオラの聖フランチェスコ”は、うねる伝説の海原を左手で表し、右手がそこを歩くフランチェスコ、そんな壮大なイメージを1台のピアノで表現するリストの大曲だが、音だけで情景が浮かんでくる。この1曲だけでも審査委員へのアピールは充分できたのではないか。


◇演奏を終えて……
 

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ミハイル・モロゾフさん

―演奏を終えて、いかがでした?

 全く疲れていないです。いい感じです。ショパンの幻想曲を弾き終わる頃、もう少しで終わるんだなと思っていたら、少し集中力が途切れました(笑)。今日はあまり練習しすぎないようにしてきました。し過ぎると脳が疲れてしまいますからね。

―今どこで活動されているのですか?

 現在はパリに住んでいます。



鈴木宏英さん 

―演奏を終えていかがですか?

 ものすごく緊張しました。緊張はしますが、緊張した時の方がうまくいきます。本番に強いというか、タイプ的にはミスは少ない方なんです。
でも、スケルツォは最後のコーダのところで失敗してしまいました。あそこに命かけてたのに(笑)。ちょっと楽譜出しましょうか?

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―いえ、今は結構です(笑)。そんなことを感じさせないいい仕上がりだったと思いますよ。バッハもとても清楚で、もう1曲バッハを弾いていたら、泣いていました(笑)。

 またまたぁ、ほんとですかぁ(笑)? うまいこと言ってくれるじゃないですか!
音をはずしたらどうしようと思うと……、結局はずしたんですが。でも、充実した演奏が出来ました。

―どのようにプログラムを考えたのですか?

 幅広いプログラムを組みたいと思って、こういう組み立てをしました。一つの作曲家に偏るのはもったいないと思うのです。出来るだけ多くの作曲家に触れたいですね、まだ何が得意と決める年ではないと思っています。

 

*初対面の鈴木さんの人懐っこさに引き込まれて、笑いが途絶えないインタビューとなりました。若さが弾けてます!



ドミートリ・オニシチェンコさん

―今回が3回目の挑戦となりましたが、第一次予選を終えての感想をお聞かせください。

 とてもエキサイティングでしたし、貴重な経験をさせてもらいました。とても幸せな時間を過ごせたと思います。音楽、人、友達、それぞれにコミュニケーションが取れました。いい経験です。

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―今日はすべて短調という組み立てでしたね、面白かったです。

 そんなに意識したわけではありませんが、好きな曲を集めてみたらそうなったということでしょうか。

―現在はどのように過ごしているのですか?

 今はモスクワに住んでいて、演奏活動をしています。

―将来を考える時、どのようなビジョンをお持ちですか?

 ずっと演奏活動をしていきたいと思っています。教えることにも興味がありますが、

割合でいえば、演奏活動が70%、教えるのが30%だと嬉しいですね。



シェン・ジウミンさん

―演奏を終えての感想をお聞かせください。

 全体的によく出来たと思います。バッハは少し緊張したけど、おおむねいつも通りに弾けたと思います。ベートーヴェンは比較的短いので、2楽章も入れて2つを一つにまとめました。厳密にいうと、これが初めての国際コンクールです。ですから、音をホールに合うようにどのように音を出すかとかを考えました。

―でも、国際コンクールが初めてでも、ホールで演奏する機会がこれまでなかったわけではないでしょう?現在はカーティスですか?

 はい、カーティスです。大学では、申請すればリサイタルを開かせてもらえるんです。聴衆には無料で聴いてもらいます。ですが、その場のムードや状況がコンクールとは全然違います。

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―コンクールでは楽しんで聴けませんでしたか?

 充分準備が出来ていたら、楽しめると思いますけどね(笑)

角田珠実

 

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