• 第7回コンクール概要
  • トピックス
  • スタッフレポート

審査委員によるマスタークラス 2日目

2012年11月23日|スタッフレポート

昨日に続いてマスタークラスが開かれたが、昨日受講生だった阪田知樹さん、今日受ける予定のアシュレイ・フリップさん、實川 風さんは自分以外のマ スタークラスを、そして2次予選まで行った佐野主聞さんが受講する生徒と同じ教えを乞うべく、客席から熱視線を送っていた。きっと彼らは受講した生徒と同 じ、いやそれ以上のものを吸収して帰るに違いない。今後の活躍を見守りたいと思う。

 

最初に登場した生徒はアシュレイ・フリップさん。マスタークラスを担当してくださったのは、ジェローム・ローズ先生だ。ブラームスの4つの小品が受講曲だが、まず通しで弾いて欲しいとフリップさんを促し、ローズ先生は客席に座って聴いた。

開口一番、「とてもよかったですよ。10人ピアニストがいたら10人違った意見を持っています。これから私の意見を申し上げますが、それを受け止めるか、拒否するかはあなた次第です。私にははっきりとした、強い意見があります」ときっぱり。

4つある曲を一つずつ解説したのだが、印象に残ったのは、第1曲 間奏曲 ロ短調のけだるいようなメロディに対してのアドバイスだった。

「シンプルなメロディラインではなく、連続して続いていく長い旋律と考えてください。ただ音を切るのではなく、導かれていくように弾いて欲しいのです。そして、ブラームスのピアニッシモは、リラックスし過ぎず、緊張感を持ってください」

ピアニストにとって難しいのは、続くようにメロディラインを弾くこと。ご自身も歌ってみせながら音が歌うように響くことの大切さを説いた。フリップさんもローズ先生の期待に応えて、スポンジが水を吸収するかのように次々と課題をクリアしていった。

20121122013sr.jpg
一番感動したのは、ローズ先生の奏でる音の迫力だ。一台のピアノからシンフォニーが聴こえてくるかのようなダイナミックな演奏に圧倒されっぱなしだった。その音をここで再現できないのが残念でならない。実際に聴いてみる大切さを痛感した。


 

次の講師は、キム・デジン先生。前回に引き続き2度目のマスタークラスを開いてくださったキム先生には、すでに先生のファンがいらっしゃるのだろ う、ふと客席を見るとほぼ満員の状況だった。浜松国際ピアノコンクールに関係するすべての人々の労をねぎらった後、キム先生らしい言葉が最初に語られる。

「私は、マスタークラスはあまり賛成ではありません。というのは、この機会の後、その生徒に会うことがないので、与えたことを完全に消化できるか見守ることが 出来ないからです。そういうわけで今日は、基本的なこと、彼らの作品にそのまま当てはめられるようなことを言いたいと思います。生徒を混乱に陥れないよう にしたいと思っています(笑)」

受講生のソ・ヒョンミンさんに対して、「彼はすばらしい演奏をしました」と健闘を称 え、ショパンのバラード 第4番の演奏を促し、会場はまさにリサイタル。ソ・ヒョンミンさんの演奏に、「とてもよかった、あまり上手で教えることがない。 すでにわかっていることの繰り返しになるかもしれませんが……」と前置きしながら語った比喩に深くうなずいた人も多かったのではないか、次のとおり。

「どんなおいしいご馳走を作ったとしても、それをのせる皿が汚れていては何にもなりません。ちゃんとした皿にのせなくてはいけない、それを私は『基本』と呼びます。基本で認識すべきはテンポ、音楽はテンポに基づきます」

20121122014sr.jpg

テンポが大事だということは誰だってわかっている、なのにそのテンポで失敗する人は多いのだ。

「テンポがわかっていても、ステージで本当にそのテンポになっているでしょうか?
私のテンポはこれくらいと、わかっているかもしれません。でも、そのテンポをステージでどうコントロールするか?

自分の演奏を録音してみましょう。それを聴き返してみるのです。コンクールでは、録音したものをもらえるのですから、それを聴くことで勉強しましょう。楽譜を読むこと、それも大切です」



 

3人目の講師はディーナ・ヨッフェ先生で、受講生は實川 風さん。実はヨッフェ先生、實川さんがどんな人なのだろうかと、HPを訪れたらしい。そこ に自然を写した写真がいっぱいあって、實川さんが素晴らしいファンタジーを持った青年に違いないと確信したのだという。受講曲は第3次予選で弾いたシュー マンの幻想曲を弾いてみる。それを隣で聴いていたヨッフェ先生が驚かれた。

「最初の1音から別人かと思いました(笑)。何でちょっとの間にこんなに変わっちゃったの?どっちが本当のあなた?もしこの演奏でコンクールに出ていたら、明日(本選)あなたの演奏を聴いていたと思います」という言葉に、会場も喝采!

次 に話してくださった、かつてヤマハのマスタークラスで教えていた時のエピソードも感慨深い。「小さな男に子を教えていたのですが、きれいな演奏で非の打ち どころがない、でも面白くないのです(笑)。それで、『そうなんですか』を10通りの言い方で言ってくださいと(笑)。それを音楽に当てはめる。自分の言 葉を、音楽を通して当てはめればよいのです」

日本には四季がある、四季の色はみんな違う。色が違うことをどうやって説明したらいいか、どう歌いたいかです。

演奏する速さにも言及してくださった。あまり速く弾くことを注意されたのだが、これは今回のコンクールでも言えることだそうだ。最近の傾向に警鐘を鳴らしたということだろう。

「聴こえる以上の速さで弾く人が多かったように思います。耳がついていける速さで演奏してほしいのです」

20121122015sr.jpg

現在はザルツブルグに在住のヨッフェ先生、ある日隣の席で若い二人が2時間、ひと言も言葉を交わさず、i phone で会話していたのを見て嘆かれたのだという。音楽は心がある、ちゃんと会話をしてほしいというメッセージは、重く受け止めなければならない。

日本通でいらっしゃる先生だけに、ご存じの日本語も多く、頻繁に発せられるので、その度に会場に笑いが起きた。楽しい、あたたかいマスタークラスだった。

*今回講師をしてくださった3人の先生方の経歴は省略させていただきました。プログラムに紹介していますので、ご覧いただきたいと思います。

 

角田珠実

 

  • 一覧へ戻る

主催

  • 浜松市
  • 浜松市文化振興財団

特別協賛

  • ANA
  • 遠鉄グループ
  • JR東海
  • KAWAI
  • Roland Foudation
  • 三立製菓株式会社
  • YAMAHA
〒430-7790 静岡県浜松市中区板屋町111-1 公益財団法人浜松市文化振興財団内  TEL:053-451-1148  FAX:053-451-1123
MAIL : info@hipic.jp URL : http://www.hipic.jp
Copyright (c) Hamamatsu International Piano Competition.
All rights reserved.
Powerd By Ultraworks