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【公式レビュー】第1次予選 1日目後半

2012年11月11日|スタッフレポート

出場者の演奏を聴きながら思ったのだが、課せられた曲目の中でいかに自分の個性を引きだすかということを、だれもが考えてきたに違いない。それが想定通り出せるかどうかが、次のステージに進むかどうかの分かれ道になりそうだ。第1次予選はフィギュア・スケートでいえばショートプログラム、ちょっとしたミスが結果を左右するかもしれないと慎重になることで、楽しんで演奏ができないとしたら残念だ。とにかく演奏を楽しんでほしいと思う。


後半最初の演奏者、三原未紗子さん(日本/23歳)は、ラメの入った黒いドレスで登場。バッハの後、モーツァルトのソナタ 第8番 イ短調 K.310 第1楽章へ。モーツァルトの短調が好きで、難しいのはわかっていたが、やはり好きな曲を弾こうと敢えて挑戦したという三原さん。ピアノを弾く人ならだれもが一度は弾く曲、懐かしく思いながら聴かせてもらった。モーツァルトの切迫した気持ちが伝わるような曲から、リストの“「伝説より」波を渉るパオラの聖フランチェスコ”へと曲を組み立てた構成力を評価したい。

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アンナ・ドミトレンコさん(アメリカ/20歳)は黒を基調とした胸元に光る石が輝くIラインのドレスで登場し、20歳とは思えない大人っぽさ。曲が始まると、その雰囲気が彼女の狙いだったことに気付く。彼女のテイストなのか、選んだバッハも冒頭にLargoという速度表示がある短調のプレリュード。厳かに響く曲調で始まり、次第にバッハの世界へ入って行く。ベートーヴェンも、数あるソナタの中でよくぞこれを選んだと思わせるくらいバランスのいい演奏だった。最後に弾いたワーグナー/リストは、たっぷりとした音でスケールの大きい演奏を心掛け、最後の1音まで余韻を味わっていたのが印象に残った。

シモン・ラリヴィールさん(カナダ/27歳)は、この日最初にカワイを選択、ハイドンを聴いた時、ピアノとのラリヴィールさんとの相性が良かったようで、これが功を奏したと感じた。高音部がきれいに軽やかに出ていて、よかったと思う。リストのメフィスト・ワルツ 第1番は、華やかさがあり、第1次予選に難曲を持ってきた心意気を買いたい。演奏自体にも余裕が感じられた。ハイドンと同じく高音のパッセージが軽やかで、技巧的なリストを魅せた。
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内匠 慧さん(日本/20歳)は、最終ブロックの最初に弾いたコンテスタントだ。抑え気味に始まったバッハに品の良さを感じる。姿勢のいい弾き方にも好感が持てた。続いて弾いたハイドンのソナタも音が上質、特にピアニッシモで弾いた音の美しさは、今後彼の強みになると思う。
そして、ブラームスのパガニーニの主題による変奏曲は、これまでバッハ、ハイドンと抑えた演奏だったので、いい意味で私たちに驚きを与えた。一転、力強いバリエーションに惹きこまれていく。速いパッセージも音の取りこぼしがなく、一つ一つがクリアに聴こえた。

森田義史さん(日本/29歳)のピアノを弾く姿に彼独特の美意識を感じる。それは音楽にも表れていて、それぞれの作曲家をその作曲家の意図するところを捉えようとする意識が聴く側にも伝わってきた。バッハはバッハらしく、ハイドンはハイドンらしく!ハイドンのソナタもリストのハンガリー狂詩曲も最もポピュラーな曲を選んだだけに、いい緊張感が保てたのではなかろうか。長く続くフィナーレへの盛り上げは、最後の最後をちゃんと閉めることができた。

アシュレイ・フリップさん(イギリス/23歳)は、バッハを楽しんで弾いているのが伝わってきた。そうして私たちに届けられたバッハは、端正な音。ベートーヴェンのソナタ第3番 第1楽章は表現力のある演奏で、難易度の高い曲だということを感じさせず、さらりと聴かせてくれた。

初日最後の演奏者はイ・ジンヒョンさん(韓国/21歳)。グレン・グールドを彷彿とさせるやや椅子が低めの座り方ということに気付いた。その方がいいのだそうだ。いとも簡単そうにバッハを弾くので、この曲はこんなに簡単だったかという錯覚を抱きそうになる。プログラムの順番では、バッハの次はシューマンになっていたが、彼はベートーヴェンのソナタ第23番「熱情」を先に弾いた。音が出た瞬間から、艶のある音にワクワクしてしまう。ベートーヴェンを聴いていた時から、次はどんなシューマンを聴かせてくれるのだろうと、期待感は増すばかり。そして、見事それを裏切らない、いいシューマンのトッカータ ハ長調だった。
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◇演奏を終えて……

内匠 慧さん

―演奏を終えての感想はいかがですか?

全体として、感想というより失敗した点しか頭にでて来ません。今回は、音自体は一次予選の緊張感のなかで良く聴けていたほうかとも思いましたが、それでかなり些細な点に気を取られ過ぎてしまい、ミスにかなり気を引っ張られるような演奏になってしまった感があります。

―とてもいい演奏だったと思いますよ。

メンタルに問題があったかもしれません。 次は(もし次があるなら)、もう少しポジティブな精神状態で大胆に演奏したいところです。

―演奏する姿勢がきれいでしたね。

でもお辞儀は映像配信で見ましたが、相当下手でした!でも一時期とくらべれば、歩き方等はこれでもかなりまともになったと思います。

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イ・ジンヒョンさん

―演奏を終えていかがでしたか?

 実はあまり自分の演奏に満足していないのです。

―えっ?素晴らしい演奏だったと思いますが……。

 演奏に集中できませんでした。もっと集中すればよかったと、後悔しています。実は今日6時間練習して、それで疲れてしまったのです。

角田珠実

 

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