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【公式レビュー】 本選2日目

2012年11月25日|スタッフレポート

本選2日目も、早くから当日券を求めて、自由席を買った人もできるだけいい場所を求めて、お客様が列を作ってくださっ た。「並んだから確実に買えるわけでもないかもしれませんが、運よく買えたらいいなと思って並んでいるんです」と言いながら、静かに販売開始まで待ってく ださっている。クラシック音楽のコンクールにもかかわらず、驚きの光景が目の前にあった。このように、第8回浜松国際ピアノコンクールに熱烈な関心を示し てくださったことに、感謝してもしきれない。


キ ム・ジュンさん(韓国/29歳)が演奏したのは、ブラームスの協奏曲 第1番 ニ短調だった。Wブラームス。本選二日目は3人の演奏のうち、最初の二人が ブラームスの同じ曲を演奏する、演奏する側、聴く側、それぞれに覚悟がいる日になった。この曲はオーケストラがひとしきり演奏の後、その創り上げた世界に ピアノが入って行くかたちだが、昨日内匠さんの演奏で感じたようにピアノの音が硬いように感じた。調律した直後に弾くことになる第1奏者が背負う課題だ。

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第1楽章のピアノパートを弾き始めたキムさん、繊細にていねいに弾いていて、集中力を味方につけているのがわかる。弾き終わって上げたキムさんの手と井上道義氏の指揮棒が同時に上がってシンクロした。

なだらかな第2楽章もオーケストラのリードで始まり、ダイナミックなキムさんらしい演奏を封印してしっとりと歌い上げていた。弦との調和も美しく聴いた。

第3楽章はピアノが先に出た。リズミカルな章だけに余裕が出て来たのか、弾いている時だけでなく、弾いていない時でも身体でリズムを取っているように見えた。

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◇演奏を終えて……

―演奏を終えての感想をお聞かせください。

 すごく幸せな気分です。これまではやはりそれなりのプレッシャーがありましたから、4つのラウンドがすべて終わって、やっと浜松での日々を楽しめるかなという感じになりました。

―この協奏曲は以前演奏されたことがあるのですか?

オー ケストラと演奏するのは、今回が初めてです。ですから、このような場でオケと演奏することに少し不安でしたが、運よくすべてうまくいった方だと思います。 最初緊張していたのですが、徐々にテンポも音楽表現も、自分らしいものを出すことが出来て、結局最後には楽しむことが出来ました。

―最初のオーケストラの演奏が長いですが、あの時って、何を考えているものなのですか?

 待っている時間ではなくて、あの時間も演奏の一部だと考えています。ソロのパートだけ弾けばいいというものではありません。オーケストラとともに歌い、オーケストラがこれから何を演奏しようとしているかをイメージしながら聴いていました。

―続けてブラームスの演奏となりましたが、正直後がよかったですか?

  第3次予選が終わった後、やっぱり演奏の順番というのは気になりましたが、最終的には審査委員の手にゆだねたいと思いました。そして決まってしまえば、も う順番というのは関係なく、自分の演奏に集中すべきだと考えました。たとえ彼女が同じブラームスを弾いたとしても、彼女は全く違うように弾くはずですか ら。




2回目のブラームス 協奏曲 第1番 ニ短調。中桐 望さん(日本/25歳)の強みは、なんといってもコミュニケーション能力の高さだ。オーケストラの中 にすうーっと入り込んで、違和感がない。第1楽章のソロのパートが始まると、前者との違いがテンポや音楽表現に見られるが、比較するよりそれぞれを初めて 聴くような気持ちで聴きたいと思った。
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第2楽章では静かにオケとの掛け合いを楽しんでいる。静謐な、たゆたうような時が流れた。中桐さんの創り上げた世界をオーケストラも受け入れ、歩み寄った。

一転して軽快に始まる第3楽章、中桐さんはこのギャップを楽しんでもらおうとしたのかもしれないと思えるような大胆さだ。オーケストラの演奏に聴き入っている彼女の演奏が先に終わり、曲全体に満足しながらエンディングを待つ姿が印象に残った。

*演奏が終わった後、指揮者の井上氏がジェスチャーで観客に感謝の意を表し、さらにそのジェスチャーが誤解を生じてはいけないと心配し、言葉でメッセージを送った。

「ブラームスのような長くて重い曲を忍耐強く、2回も静かに聴いてくださって、こういうお客様がこのコンクールを支えているのだと思いました」
 

◇演奏を終えて……

―演奏を終えての感想をお聞かせください。

指揮者の井上さんとオケのみなさんがすごいパワーを与えてくださって、練習中やリハーサルでは出来なかった音楽がどんどん湧いてくる感じで、気持ちよく演奏することが出来ました。

―2番目に弾くことになりましたが……。

  私はキムさんのブラームスは全然聴かなかったので、自分自身が比べることはなかったです。お客様にとって2回続くのはヘビーだとは思いますが、ブラームス はそんなにメジャーではないから、キムさんに一度弾いていただいて、さらに私の演奏で細かいところを味わい尽くしてもらいたいということを心掛けていたの で、お客様がどう思っていただいたかはわかりませんが、自分自身にプレッシャーはありませんでした。

―この曲をコンクールで弾いたことは?

ないです。このコンチェルトは長いので、コンクールではなかなか選択できないのですが、今回弾かせてもらえるということで、絶対ブラームスと思って決めました、私自身大好きな曲なので。

―ロマン派の作曲家、ブラームスを選んだことについて。

  ロマン派が、一番気持ちが入りやすいですね。自分の一番いいところがロマン派で活かせると思っています。特にロシアものの作曲家と違ってドイツものは、国 民性が内向的だったり愛情深かったりと、日本と似ています。日本人の血しか流れていないのにチャイコフスキーなど弾いてもきっと私には無理があると思った ので、深い味わいがあるブラームスの方が自分のいいところが出るのではないかと、選んだのです。 

―今日の真っ赤なドレスは、これを着ようと決めていらしたのですか?

 冒頭のブワーッとくるところは、「ブラームスの葛藤の炎」だろうと思っていて、赤にしました。本選に残ったら着ようと決めていました。ここは日本だし、本選ではたぶんドレスは私しか着ないだろうと思って、華やかに行かせていただきました。



佐藤卓史さん(日本/29歳)は、ショパンのピアノ協奏曲第1番を選択。2曲のブラームスが続いた後の会場に軽やかな空気が広がる。

オーケストラの演奏に続き、ガッシリとした冒頭の音で聴衆を引きこむ。誠実にひとつひとつのメロディを紡いでいく、佐藤さんの音楽に向き合う姿勢が滲み出るような演奏だ。

2 楽章のピアノは、期待通りのロマンティックさに始まる。それが徐々に力を増し、まるで切なさをつのらせてゆくような音楽が、どこか愛らしい。まさにご本人 が表現したいと語っていた“痛がゆい”青春の切なさ。聴かせどころでは、透明な響きを丁寧に奏で、ホールのすみずみまで届ける。会場中の集中力が高まった 瞬間だ。

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そして、2楽章でこれほどまでに切なさを歌い上げたショパンがその気品を改めて取り戻そうとするような、第3楽章。オーケストラの中で凛と存在するピアノ の音が魅力的だ。そもそもほんの少しのミスタッチなど音楽においては関係のないことだろうが、音楽全体の安定感があったことで、それは気に留められないレ ベルと受け取られただろう。最後の部分は、ピアノパートが終わった後のオーケストラに重ねてピアノを弾く方法をとっていた。大きな拍手とともに、ブラボー の声もあちらこちらから上がる。このステージでもやはり、力技に頼らず音楽性でしっかりと魅せてくれた。
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◇演奏を終えて……

─ショパンを選ばれた理由は?

ロマン派のコンチェルトを弾こうと思ったときに、ショパンは長く勉強してきたけれど今回他のラウンドでは弾かなかったので弾いてみようと思いました。

─協奏曲の最後、オーケストラの音に重ねてピアノを演奏されていましたね。

はい、あれはショパンコンクールでポリーニもやっていますし、わりとやる人がいる演奏方法です。時代として、ショパンまでは古典派のコンチェルトの範疇に入るので、ああいう部分は弾いても良いのです。

─井上道義さんとの会話で印象に残っていることは?

とても気さくなマエストロです。演奏の後にはあまり話をしていませんが。おとといの打合せも、この曲は演奏したことがあるんでしょと確認されて、10分ほどで終わりました(笑)。さすが経験のあるマエストロは要点をつかんで演奏されるのだなぁと思いました。

─演奏順が最後でしたが、どのように気持ちを保ちましたか?

この曲が持つ新鮮さを持って演奏したかったので、必要以上に練習しないようにしました。

─(1次スタインウェイ、2次&3次ヤマハ、本選スタインウェイと、)ステージごとでピアノを変更されていますが、どのように選ばれたのですか?

それぞれが個性的でアイディアがはっきりしている楽器だったので、最初のピアノ選びのときと、他の参加者の演奏を聴いたときの印象で、次の自分のプログラムにはどの楽器が合っているかを考えました。

─ところで、ウィーンに移られたことで演奏が変わったのかもしれないとおっしゃっていましたが、どんなことが変化したのでしょうか?

ま ずは、コンサートにたくさん行くようになりました。また、古い音楽の伝統に触れる機会がより多くなりましたね。あとは具体的にピアノのテクニックの面でも 変化がありました。現在ついているケラー先生から、指遣い、ペダリングなど、楽に弾けるメソッドを習いました。本番の前の準備、直前の練習にどんなことを したらよいかを教えてもらったことで、本番の1回により集中することができるようになったんです。

 

角田珠実(キム/中桐)
高坂はる香(佐藤)

 
 

 

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