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【公式レビュー】 本選1日目

2012年11月24日|スタッフレポート

この日のために入念な準備をしてきたファイナリストたち、そして今日、この場に立てなかったコンテスタントたち、さらに出場が叶わなかった若きピアニスト たち、みんなの思いがここ浜松に集結して、本選第1日目が始まった。誰が優勝するのか、それを見守ろうとたくさんの人が会場に詰めかけてくださった。
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12番目。内匠 慧さん(日本/20歳)が第一次予選で演奏した順番だ。もう内匠さんの前に誰もいなくなってしまった。本選第1日目の第1演奏者に なった、1番若いファイナリストが演奏したのは、ラフマニノフの協奏曲 第2番。ソロで始まる緊張の一瞬、内匠さんは少し時間を取って集中しているように 見えた。ラフマニノフのこの曲の始まりは、聴く側も微かな音から始まる瞬間を聴き逃すまいと緊張する。第1奏者のピアノによくありがちなのだが、ピアノの音が硬く響いたように感じた。しかし、よく鳴っている。ピアノで表現された鐘の音がだんだん大きく会場に鳴り響いていって、クライマックスでオーケストラ が入ってくるが、その音に飲み込まれずに伍している。この曲の特徴でもあるが、一番見せ場であるピアノの超絶技巧は、その弾いている様子を目では見ることが出来るが、耳に入ってくるのはほとんどオーケストラの音が占めている。そのせいかどうか、コンクールで何度もラフマニノフの2番を聴いてきたが、ピアノの音がオーケストラに飲み込まれて、残念な結果に終わったのを見てきているので、いい具合にオーケストラと与している内匠さんの演奏は、安心して聴いていられた。

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第2楽章、この美しいメロディをどれだけ歌えるか。途中、内匠さんのミスタッチにヒヤリとしたが、彼はミスしたことを引きずらず、そこからの立ち直りも早かった。このコンクールで第1次、2次、3次と弾いてくる中での精神的な成長には、本当に驚かされる。オーケストラの音にもよく気を配って、掛け合いにも余裕が感じられた。観客が聴き入って、一緒にラフマニノフの世界に入り込んでいる、もちろん私もだ。

第3楽章の軽快な音も、彼のピアノテクニックで聴かせてくれた。ふと気が付くと、指揮者の井上道義氏率いる東京交響楽団全体が非常にノッている。丁々発止のコラ ボレーション、ノせたのは内匠さんか? 徐々に迫ってくるエンディングにワクワクしながら最後の瞬間を迎える。直後の「ブラヴォー!」の発声は、納得だ。

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◇演奏を終えて……

―演奏を終えての感想をお聞かせください。

  完璧な演奏ではないが、それはいつものこと。第2楽章のミスから立ち直ったのはよかったと思います。技術面はさておき、このコンクールで初めて自分らしい 演奏が出来たと思えるところがあったので、それがよかったと思います。第1次予選からコンクールにとらわれて弾いていましたが、コンサートとして楽しめま した。

―ステージに登場して、演奏が始めるまでかなり時間を取ったように感じたのですが……。

 コンサートの始まりって、皆さんもワクワクする感じがあるでしょう。でもラフマニノフの曲の始まりはああいう感じ(ゆっくりと静かに始まる)ですから、その雰囲気を絶って、変える必要がありました。
 

―第2楽章のミスからの立ち直りが素晴らしかったと思います。

 あそこは見せ場だったのにミスしてしまいましたが、次の見せ場で挽回しようと思いました。

―オーケストラも本番が一番良かったと思いました。内匠さんがノせたのではないかと思ったのですが……。

 僕もリハーサルの時より気合が入っているなと感じました。

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―ラフマニノフの2番を弾いたことは?

 9月にアマチュアのオーケストラからこの曲を弾いて欲しいとオファーがあり、9月に弾く機会がありました。

―弾いたピアノの感想を聞かせてください。

 実はあの機種が気に入っていました。本当にいい音で弾きやすかった、特に第2次予選の1、2番目に弾いた曲、リストの「忘れられたロマンス」とショパン/リストの“「6つのポーランドの歌」より春”の時、やわらかくて弾きやすかったです。



 
アンナ・ツィブラエワさん(ロシア/22歳)は、大好きな作品だというシューマンのピアノ協奏曲を選んだ。がっしりとした音で始める。身体の力を上手に 使った豊かな音が、大ホールの端まで響き渡る。彼女の特徴であり魅力は、その哀愁漂う力強い音にあるが、この演奏ではさらにそこに心のままが投影されて、より色濃い表現を聴くことができた。シューマンが生涯に完成させたたったひとつのピアノ協奏曲であるこの作品で、その音楽に込められた想いを切々と奏でている。彼女には、この作品を通して伝えたい想いがあるのだろうという感じが伝わってくる。
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終楽章では、まったりと重いピアノがますます力を増す。心地よい“引っ掛かり”を残す独特の歌い回しが、オーケストラと懸命に重なろうとしている。情感豊かに、しかしどこか硬派に奏でられる音楽が、彼女の個性を存分に示していた。
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◇演奏を終えて……

─演奏を終えてご気分はどうですか?

みなさんのために演奏できてうれしかったです。すばらしいホール、オーケストラ、指揮者と共演できて、この場にいられるだけで幸せです。これまでに受けた中で一 番大きなコンクールですし、こんなに大きなホールで演奏することも初めてです。サポートをしてくださったみなさんに感謝しています。
 

─ツィブラエワさんの演奏を聴いていて、シューマンのことをどんな人だと思っていらっしゃるのかお聞きしてみたいと思いました。

私とはとても違う人ですが(笑)。でも、彼の音楽はとても理解できるし、とても近いものを感じます。彼の音楽が持つコントラストがとてもおもしろくて。彼の音楽は、人生そのもののように思います。本当にすばらしいものです。

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─リハーサルでは井上さんにいくつかリクエストされている様子でしたね?

リハーサルはとても良い感じでした。演奏を始めるとすぐに最初からお互いを理解し合うことができました。ただ、アンサンブルとして合わせるのが少々難しい箇所があったので、そこを少し話し合っただけです。
 

─パンツスタイルにはこだわりが?

演奏するときは、着心地が良いことが一番なんです。

─色のこだわりとかではなく?

その意味でもこのスーツは好きですよ(笑)。

─ピアノの色ですもんね。

そうです、世界で一番美しい色です!



 
初日最後の奏者となったイリヤ・ラシュコフスキーさん(ロシア/27歳)は、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を演奏。爽やかな冷たい風が吹き抜けるよ うな冒頭のあとは、すぐに、重く、響きの伸びも充分の音を鳴らして、強いインパクトを与える。弱音も驚くほどにオーケストラの中で美しく響いてくる。やわらかい音色はどこまでもやさしい。1フレーズずつタッチを変えて、卓越した表現技術を見せる。それに呼応するように、オーケストラもますます力を増して、 エネルギッシュな音楽を繰り出してくる。互いがぶつかり合い絡み合う、生き生きとした音楽が生まれていた。
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ピアノは、スケールの大きな音楽の中に、時折ハッとするアクセントを加え、聴いているものの心を離さない。さまざまな情景が脳裏に映り、演奏しているラシュコフスキーさんの頭の中を覗いてみたくなるような楽しい演奏だった。圧倒的なフィナーレで、会場からは大きな拍手とたくさんのブラヴォーの声が贈られ た。
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◇演奏を終えて……

─演奏を終えてご気分は?

これまでの予選を弾き終えた後とはまったく違う気分です。ようやくすべての演奏が終わってリラックスしています。

─リハーサルでは、マエストロとどのようなコミュニケーションがありましたか?

僕達は、特に何も話すことなくすぐに理解し合えました。マエストロはオーケストラに話をしていましたね。

─今回この曲をオーケストラと演奏されるのは何回目ですか?

3年前に勉強したのが最初です。ドイツのアマチュアオーケストラとの演奏だったので、リハーサルをたくさんさせてもらい、それが良い練習になりました。その後また機会があって準備をしましたが、コンサートがキャンセルされてしまいました。そんなわけで、今回改めて浜松コンクールのために準備をしたので、たくさん演奏経験のある作品ではありません。ファイナルまでいけるかはわからないのに、浜松に着いてから毎日練習していました。

─予選でもロシアものを多く取り入れていますが、自分の国の作品を演奏するのはどういうお気持ちですか?

僕は、ドイツ作品やショパンなども、ロシアものと同じくらいとても好きなのですが、正直言うとこれまでロシアものを演奏するほうが自然と良い結果になることが多いようなので、今回はこれらの作品を選びました。

─ひときわ大きな拍手が起きていましたが、聴衆の印象はいかがでしたか?

日本の聴衆がすばらしいのはわかっていましたが、あんな反応があるとは想像していなかったので、とても驚きました。

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─浜松で観光などは何か楽しみましたか?

音楽に集中するようにしていたので、練習と食事くらいしかしていませんでした。でも、楽器博物館には行きました。いろいろな音のサンプルが聴けるのですが、全部試してみましたよ!



 

終演後には、一般の聴衆の方々も交えて、ロビーで海老彰子審査委員長、エヴァ・ポブウォツカ審査委員、ディーナ・ヨッフェ審査委員による記者会見が行われた。

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(左から、エヴァ・ポブウォッカ審査委員、海老彰子審査委員長、ディーナ・ヨッフェ審査委員)

特にエヴァ・ポブウォツカ審査委員からの言葉が印象的だった。

「ひとりひとりがすばらしいピアニストで、自分が望み、想像していることを表現する能力があります。これからも、ピアノの練習だけにいそしむのではなく、人生そのものからいろいろなことを受け入れてほしい。本やインターネットからだけではなく、自然からも多くのことを学んでほしいと思います。日本は自然の豊かな国ですからね」

角田珠実(内匠)
高坂はる香(ツィヴラエワ/ラシュコフスキー)

 

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