有り余る才能~キム・デジン先生インタビュー~
「彼らは、あまりにも才能があり過ぎるのです」
これは、私がキム先生にある質問をしたときの答えです。『ピアニストもゴルファーも』や『ゆっくり、そして呼吸』で、キム先生のマスタークラスの様子をご紹介しました。
その中で、キム先生が受講生に繰り返しアドバイスすることは、大きく分けて4つ、以下のようなことでした。
-曲を通して、同じテンポを通すこと
-呼吸をするのを忘れないで
-休符は大事です
-(ピアノを弾いている時)身体は動いているが、自己表現は出来ていない
受講生は、第3次予選を通過しなかったとはいえ、先生も“プロフェッショナルな生徒”と認めています。でも、上記4項目は、こう言っては何ですが、とてもシンプルで誰でも出来そうな、何も“プロフェッショナルな生徒”にするアドバイスではないのではないか?
これが私の投げかけた質問だったのです。そして、キム先生の答えが冒頭の一言です。
「才能があり過ぎる。才能がなければ基本を大事にするだろうけれど、才能があるゆえに何か、いろいろ美しいものをカップの中に入れたがるのです。それに彼らはまだ若い。基本的なことは、重要な要素です」
そんなキム先生にズバリコンクールについて伺いました。
「必要悪。コンクールに勝つことは、ある意味問題があるのです。たくさんのネガティブな要素を含んでいます。ですが、コンクール以外に才能を見せる場がないというのも、事実です」
たくさんのネガティブな要素?
「たくさんの人がコンクールに夢中です。コンクールに出続けると、同じ曲ばかり弾くことになる、レパトワが増えない。30才を過ぎれば、コンクールに出るチャンスはなくなります。だから30才までにコンクールに出ようとする。ですが、30才までにレパトワを増やさなければ、レパトワを増やすことは出来ません。私の経験から申し上げますと、若い時に覚えたものは、今でもすぐに弾けますが、30才過ぎに覚えたものは、後々弾く時に、最初の譜面さえ出てこないのです」
キム先生もおっしゃったように、コンクールがなかったら、誰にも自分の才能に気づいてもらえないというのは、現実です。私はここにいますよ!コンクールは自分をアピール出来る貴重な場所であることは誰もが認めるところでありましょう。その一方で、残念ながらキム先生が警鐘を鳴らしているようなことも起こり得るというわけです。
コンクールに挑戦するたびに新しいレパトワを用意する。難しいことですが、そういう努力をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか?
第1次予選最終日に演奏した尾崎有飛さんが、インタビューで次のようなことをお話くださいました。
第1次予選の選曲はどのように決めたのですか?
「自分の弾きたいもので、今まで弾いてこなかったものを選びました。申し込みの時点で何を弾くかを決めて、そこから作り上げてきました。リサイタルをする時とかもそうですが、プログラムの総入れ替えをするんです。その前から弾いている曲だと、新鮮味がありません。いつも曲を決めてからリサイタルに臨んでいます」
キム先生!
若いピアニストのこんな発言を聞くと、嬉しくなりますね。
角田珠実







