浜松国際ピアノコンクール/THE HAMAMATSU INTERNATIONAL PIANO COMPETITION


トップページ >> ニュース&トピックス >> 浜コン スピン・オフ >> ゆっくり、そして呼吸~キム・デジン先生のマスタークラスⅡ~

浜コン スピン・オフ

ゆっくり、そして呼吸~キム・デジン先生のマスタークラスⅡ~

11月19日、キム・デジン先生のマスタークラス、二人目の受講生はチャン・ソンさんで、受講曲はリストのピアノソナタ ロ短調です。ソンさんもまずは演奏したのですが、やはりこの日の演奏の方が予選よりよかったようです。

以下の文章は、キム先生がソンさんのリストのピアノソナタ ロ短調に対して、アドバイスされた言葉の中から印象深かったものを断片的に拾っていますので、曲を思い浮かべながら読み進めてくださるとよいかと思います。キラリと光るキム先生の言葉はもちろんそれだけでも説得力を持っています。

キム・デジン先生の指導を受けるチャン・ソンさん

「ソンさんは音楽的、繊細な演奏をされる方です。ただ生き絶え絶えしくて、走ってしまう。そのことは彼も意識しているかもしれません」

「走ってしまう人、急いでいる人は話すのも食べるのも速いんです(笑)」
と話し、「素晴らしい生徒がいましたが、演奏は狂ったように速くて、電話で話してもすごく速い」と、ご自分の生徒の話を交えて話してくださいました。

「すべてはつながっているんです」、ピアノを離れても「すべてをゆっくりそして、呼吸をすること」が大事です。

今の演奏と、コンクールの時の演奏を比べると驚くかもしれません。鍵となる言葉は“コントロール”ですね。

リストのピアノソナタ ロ短調の第1楽章について、
「リストは頂点に辿り着こうとしますが、いっぺんには行きません。同じリズムなのに弾き方が全く違う、まだ辿り着いていない、続きがあるのです。ですから、走らないように。最初は質問、その次は答え、また…というように、徐々にクライマックスに向かって行く。俳優だと役に入り込んでしまい、感情移入してしまうが、それだけでは駄目です。自分の感情をコントロールしながら、演奏することが大事です」

「口に出して言うと、簡単でバカバカしく思うかもしれませんが、やはり“コントロール”ですね」

「この曲にもテンポがしっかりとある。テンポの正確さで緊張感の高まりが違う。(タヴェルナさんに引き続いて)今日はテンポのことばかり言っていますね(笑)。そして、音符の間に生命があります、音符の間に生命力を感じなければ、空っぽの音です」

「演奏の動きに関しても、今は練習のため、(身体を)動かさないで聴いてみましょう」と、演奏で必要以上に動くことを注意しています。「自分の音を聴くのです。動かないと自己表現できなくて、身体だけが動いていますよ。今後は腕の重みを感じながら“コントロール”することを心がけてください」と、ソンさんにアドバイス、そして、
「彼は非常に成熟した演奏をします。後は自分の音を全部聴くようにしてください」という講評を残し、構造とテンポはこれくらいにとしながらも、「個人的な考えかもしれませんが、テンポが大切。自分の顔を鏡で見るよりも演奏をテープにとって聴きましょう」と話されました。

最後に、
「先生のコメントに左右されるのではなく、自分を見つけてステージで表現するようにしなくてはいけない。自分が思っていることと実際表現されている音楽が同じなのかどうか、気づくことが必要です」と話されたのは、ソンさんだけへのメッセージだけではなく、コンテスタントのみなさんに発せられた言葉だと思います。

角田珠実