浜松国際ピアノコンクール/THE HAMAMATSU INTERNATIONAL PIANO COMPETITION


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浜コン スピン・オフ

ああ無常(インタビュー編)

権代敦彦先生 「まさか暗譜で弾くとは思わなかったんですよ」、権代敦彦先生は、開口一番そうおっしゃいました。演奏したこのコンクールは、暗譜で弾くことが義務付けられているとはいえ、委嘱作品は楽譜を見て弾くと思っていらした様子。ただ一人「ピアノのための《無常の鐘》」を演奏したアレッサンドロ・タヴェルナさんの演奏をお聞きになった後で、午後、インタビューは行なわれたのでした。

「演奏には、譜面を見て弾く場合と、暗譜で弾く場合があり、それぞれに意義のあることです。暗譜で弾くということは身体表現、譜面を沁み込ませてアウトプットする。この場合、楽譜は、ある意味台本です。一方、譜面を見て弾くということは、もう一度読み直しながら弾いていくことです」

練習に手袋を勧めた件については、指先の出ている手袋を使うことで、弾くことも可能だし、黒鍵のグリッサンドの練習にもよいと、やはり出場者を気遣っての提案だったようです。ただしみんなが手袋をしなかったこと、さらにそのアドバイスで逆にみんなが手を傷めたくないと権代先生の曲を敬遠したように思われることを申し上げると、「そうか、あまり心配しなくてよかったんだね」と苦笑い。

ショーン・ケナードさんの「フォルムを出すのが難しい」との感想に、
「ショーン・ケナードさんは本質をついていますね。フォルムというのは一番大事なこと、フォルムが描き出せなければ音楽になりません」と、出場者がちゃんと理解をして演奏の準備をしてきたことに満足していらっしゃいました。

タヴェルナさんが、最初の5つのフォルティシモfffffが鐘の音「アタリ(衝撃音)」を喚起します」と、言っていたとおり、フォルティシモfffffは鐘を撞いた「アタリ(衝撃音)」を表現しています。

「最初のところ、拍子がだんだん減っていくんですよ」と、タヴェルナさんが楽譜を見せながら説明してくれたところですが、拍子が1小節毎に減っていくことで表現したかったことについてうかがうと、「だんだん詰まっていく鐘の音のアタリ(衝撃音)、オシ(安定した音高)、オクリ(鳴り終わり)という、鐘を撞いた後に音量が減っていく変化、そこからイメージする時間が縮小していくことをも表現しているのです。これは作曲の一番の原理として据えた、原理中の原理です」

それにしても、演奏者が少なかったことは、権代先生も少なからず残念だったようですが、「積極的に権代先生の『ピアノのための《無常の鐘》』を選んだ出場者が、11人もいるということは、考えてみればそうがっかりすることでもないと思います」と申し上げると、「そうか、そういう考え方もあるんだね」とおっしゃっていただいたことが何よりです。

権代先生が今回「ピアノのための《無常の鐘》」を選んで、練習し、コンクールに臨んでくれた出場者に、何かメッセージはありますかとお聞きすると、「レパートリーにしてください。そして、自分の国に持ち帰って、世界中に鐘を鳴らしてください」とのことでした。

権代先生、ありがとうございました。

角田珠実